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第十一章
第564話
しおりを挟む「じゃあ、コイツらはフィシスに預けるとして。迎えがくるまでは生き餌になってもらおう」
ダイバがコルデさんに事情を伝えて、エリーさんからフィシスさんに迎えを頼んでもらうことになった。ミリィさんはアゴールや妖精たち、フーリさんたちバラクルの先輩ママさんたちに助けられて双子の子育て中。
「面白いね。シェシェが泣くとリュリュも泣き出すのに、リュリュが泣いてもシェシェは泣かないの」
「男の子と女の子の違いかしら?」
「でも、フィムとエーメは似てるわよ」
「きっとシェシェはマイペースなのね」
妖精たちは赤ちゃんたちの育児日記を書いている。ほかの妖精たちと報・連・相のためだ。アゴールが離れている私たちに読ませるためにダイバに送ってくれるため、早く帰りたくて仕方がない。
「もう四ヶ月だっけ。シーズル、ノーマンが生まれるのってもうすぐだっけ?」
「ノーマンっていうな」
「じゃあ、ノーコン」
《 農園 》
《 ノンフライ 》
《 ノーマル 》
《 ノーミス 》
「一応、人生をやりなおす意味からリドとつける予定だ」
「じゃあ、生まれるまではノーマンで生まれた後は新生ノーマン……」
「……冗談でもやめてくれ」
シエラの初産が近いこともあって、ミリィさんには手を借りるより少しでも休んでもらいたいとの理由から、エリーさんに頼むことになった。ちなみにエリーさんはまだミリィさんの双子に会わせてもらえていない。
《 罰よ、罰 》
《 そうそう。霊体でほっつき歩いていたら、真新しい生命に影響がでるのよ 》
「……もう大丈夫じゃないの?」
《 エーメたちに吸収されていいの? 》
「エーメがお腹壊したらかわいそうだからダメ!」
「エミリアちゃん⁉︎ 私の心配は?」
「……シェシェたちの性格が悪くなったら困る」
「ちょっとおおお‼︎」
「安心して。エリーさんの抜け殻は冷凍保存してあげるから」
「ちがああああう!!!」
《 遺さなくていいんだって 》
《 じゃあ、農園の腐葉土プールに入れて再利用しよう 》
《 農園の片隅で埋まってたんだから戻してあげよう 》
エリーさんは本当に再利用されるのを回避するため、いまは必死に協力している。……妖精たちの使いっ走りと化している。
精霊たちが大人しいのは額に宝石が埋められているから。妖精たちの妖力によって支配されているのだ。
「まあ、妖精たちを怒らせちゃったんだから仕方がないよね~」
「この程度で済んでよかったというべきか」
「別に私の操り水を与えてもよかったんですよ」
「ピピン、一応連中は精霊だから」
「大丈夫ですよ、エミリア。ここは『神に見捨てられた大陸』なんですから」
《 大丈夫、大丈夫。私たちの奴隷としてこき使ってやるから 》
《 大丈夫、大丈夫。これは私たちからの罰だから 》
《 大丈夫、大丈夫。たとえフィシスに引き渡したとしてもコレは外れないから 》
妖精たちの言葉に精霊たちは青ざめる。彼らはすでに100回土下座で謝罪したのだ。しかし、それでも反省はしなかった。地面に額を打ち付けて傷だらけになっていた彼らは宝石を埋め込まれた直後、一番近くにいた魔人化していたリリンを人質にして逃げようとした。
結果、ピピンの逆鱗に触れて瞬間冷凍された。
死なない精霊たちは、凍っては死んで。氷とともに砕け散って、再生してはまた凍って死ぬ。その間1秒……すごいスピードで生死を繰り返していく。
「許・し・て・く・だ・さ・い!」
「却下」
見事に1秒に1単語を言っていくが会話は成り立つ。ピピンが許すまで、私たちはのんびりと話し合い。
「結局、コイツらが死隊を作っていた張本人ということなんだな」
《 それも『名もなき女神』に加担して 》
「そして、遺体を俺たちが回収したため、新たな遺体を手に入れるためにここへ冒険者たちを送り込んだって?」
それが、ダイバたちが数時間前に保護した冒険者たちだった。彼らは夢遊病のように操られてダンジョンに入っていった。……そして相手の陣地で強敵軍団に無謀なケンカを売り、高価買取されてやっぱや~めたといっても聞きいれてもらえなかった。
「魔物に喰われたら御陀仏でしょ。人生も遺体も」
「しかし、フィールドでは……」
「それは冒険者が豊富だからでしょ。それにダンジョンでは血の臭いが充満する。そうなれば、食いっぱぐれた魔物が『残りもの、も~らい!』って集まるのは当然」
そんなことも分からんの? 無駄に長く生きてんじゃないよ。
私にそう言い放たれた精霊たちはいま、短い一生を繰り返している。
「今度から『無駄に短く生きてんじゃないよ』がいい?」
《 『無駄に再生繰り返してんじゃないよ』かな 》
「弱い奴が無駄に粋がってんじゃねえ、でしょうか」
ピピン……一時的にでもリリンが人質にされたことでキレてる。リリンって突発の事態に弱いんだよね、一瞬の判断が鈍いから……
「そうだねえ……『負け犬は遠吠えするにも平伏して許可を得ろ』にしよっか」
《 あっ、それいい! 》
こうして、精霊にふさわしい言葉が決定した。
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