私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十一章

第557話

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ユーグリアの森で起きていた魔物たちの事件は、ピピンとリリン、そして地の妖精たちの協力によって終息に向かっていた。

「ピピン、いやしの水~」
「はい、ありがとうございます。リリン、こちらのは魔物たちに。エミリアのは植物に撒いてきて」
「はあい。ピピンのは空気に混ぜて魔物に吸わせてくるね~」

私が錬金釜で作ったいやしの水、それは植物とくに草食動物が食する草に与えて操り水の効果を打ち消すために即効性。ピピンの作り出すいやしの水は、風で拡散させるため濃厚にしていた。

《 シーズル、アッチの壊れたように見せかけた小屋の地下に…… 》
《 ダイバ、回収! 回収! 》
「わかった」
「案内してくれ」

シーズルとダイバは、建物の地下に集められたり回収されずに野ざらしにされた遺体を回収している。死兵とされる前に回収しているためか、死隊の出現が少なくなったことで私たちは前線に出ていない。ただし、ユーグリアの森 こ こ で行われていた実験の処理を報酬付きで頼まれた。その報酬というのが……

《 エミリア、手付かずのダンジョン見つけたよ 》
「じゃあ、数日以内に討伐に行ってこようか」

魔物の間引きを目的兼ねたダンジョンの攻略だった。


「またダンジョンがあったのか」

三日かけて遺体を回収して戻ってきたダイバに、ダンジョンの発見を報告する妖精たち。ダンジョンの記録は以前より消失していて、どこにあるのかが分からない。そこから魔物たちがあふれ出ていると判断されたのだ。

「ダンジョンが踏破されたら、フィールドを彷徨う魔物たちの巣となる。それがフィールドの魔物を減らす結果に結びつく」
「まずは魔物の間引きをして。……それから森の伐採だ」

廃都はそのまま冒険者たちの町にする予定だ。ダンジョン都市シティの外周部をここに移す案もでたが、外周部に多いのは冒険者だった。ただ、彼らに廃都の管理は任せられない。よって廃都をファウシスから救出された前町長一家に任せようとなった。

「操り水の影響が一番酷く出ていたのは子供たちだ。その子たちもいまは普通の子供と変わらなくなっている。戦争が終わった頃には治療院を退院できるだろう」
「廃都に設置する魔導具はどうするの?」
「魔物よけ、そして犯罪者の排除だな」

王都とダンジョン都市シティは『前科者の入都を禁ずる』という厳しい制限の魔導具が設置されている。罪を償っても許されないものだ。

「実際には正当防衛など、本人による過失ではない者は入れるんだけどな」

冒険者の場合、国や大陸によって変わる規約。それを知らずに罪を犯したパターンが多い。

「そんな冒険者たちに第二の安息地を与えようと思う」

外周部にいる商人はただ商売のためにそこにいるのであって、とくに罪を犯したというわけではなかった。そんな彼らに確認をしたところ、冒険者を相手にしている商売だから一緒に行ってもいい。と半数が答えた。

「いくつもの廃村が残っている。そこも住めるようにすればいい」
「彼らはけっこう強い。侵略者があっても対処はできるだろう」
「今度、魔物の襲撃スタンピードがあっても逃げることはないだろう」
「いまいる冒険者たちもこのまま残るらしいね」

彼らの操り水による影響はすでに解除されている。それによって、いままで無意識に制限されていた戦闘能力が回復された。そして……簡単に操られていたいかりによって自分自身を追い詰めるような鍛錬を開始した。
いま城門の外に出られないのは、失われた戦闘の感触と体力を回復する努力をしているからだった。

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