私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十章

第535話

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私は重力が日本より軽いため身軽なのをかして素早く動ける。ただ、攻撃をかわすスピードが通常の倍のため、運動音痴の私の身体は慣れるまで苦労した。身をかわした状態で攻撃を打ち込む。それはダイバから動きを教わった。

「たまに攻撃をかわすのに飛びあがる奴がいるけどな、あれは目の前の相手と一騎戦で戦っている場合にのみ有効だ。魔物でも複数いれば、空中を回転して回っている間に次の攻撃を受けるぞ。中にはわざと地面から襲い、後ろへ回転させてかわしたところを攻撃する魔物もいる。オーガなどの戦闘に特化した魔物だ」
「そっか、ピョーンって飛んでかわした人間が空中をクルクル回って着地を狙っても、その間は無防備になるし、確実に着地点は決まっちゃってるからそこを狙って罠を仕掛ければ簡単にやっつけられる」
「そうだ。後転すれば腹は無防備になり、地面に手を置いて回れば次の着地点は予想がたてられる」

マンガやアニメのように、カッコよくバク宙で攻撃をかわすことはできないのだとダイバに教わった。その代わり、背の低い私は体勢を落とすことで次への攻撃に移しやすいとも教わった。

「上から落ちてくるものには横によけることでかわせる。横からくるものは下へよけろ。目は武器の上にある。武器と自分の腕で死角が生まれる。腰をつかって振った場合、視界は横へと動く。つまり振った直後の脇から腰までが一番無防備な場所だ」

ダイバは身振り手振りでみせてくれる。バク転なんて、たしかに手を地面に置く場所が決まっている。そこを狙えばバランスを崩す……ことを、実際にピピンが触手ムチで証明してくれた。ダイバは瞬時に気付いて、片手でバク転をしたが……

「こら、リリン。邪魔するな」
「おーほほほ」
「このように危険ですから、アクロバティックな身のかわしはおすすめしません」
「はーい」
「さあ、私の触手ムチにあわせて踊りなさ~い」
「アホかー!」

文句を言いつつ「ヨッ」とか「ほいっ」とリリンの攻撃を上手くかわすダイバ。ダイバが身をかわす練習をしつつリリンの攻撃練習にもなっている。しかし、それも長くは続かなかった。

ガウッ
「うわっ、白虎。お前まで参戦するのか」

リリンの攻撃を横にかわしたところで獣化じゅうかした白虎に飛び乗られて顔を舐められた。これが魔物の討伐だったらダイバは頭から食べられている。もちろん実際に討伐へ出るときはアゴールをはじめとした仲間たちが一緒のため、このように死角から襲われることはない。

《 あはは、リリンと白虎の混合チームの勝ちー 》
「よし、じゃあ今度は白虎とタイマンだ」
ガウッ

大きな白虎も、騰蛇とアラクネが住む地下で落とされた罪人たちを相手に無邪気な鬼ごっこをしてきたり、私やダイバを相手に模擬戦をしてきたからか。見た目以上に動きが素早い。

「白虎と戦ってるから、普通の魔物がスローモーションにみえる」
「今度、ダンジョン管理部の鍛練に参加してくれ。鬼ごっこで後ろから飛びかかってくれればいい」

管理部の鬼ごっこ、はじめは白虎に追い回されてすぐに踏み潰された隊員たちだった。そのうち、ただ逃げ回るだけではなく白虎の動きをみて少しでも長く逃げ回れるように動くことができてきたとダイバから聞いた。それは攻撃の特訓にも繋がるらしい。

「無駄な動きが減った。模擬戦をさせたが、白虎に協力してもらう前と後では動きが大きく変わった。それに脚力もついてきたようだ」

こうして私たちは鍛錬を繰り返してきた。対人戦ではなく対魔物戦、ダンジョン都市シティの外にはゴブリンやオーガの中でも知能の高い種族がいる。彼らと戦うのにダイバとの特訓は役にたつ。だからこそ、過保護なピピンたちもダイバとの模擬戦を止めずにいるのだった。

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