519 / 789
第十章
第532話
しおりを挟む敗残兵となった彼らは騰蛇によって廃国の結界の中に閉じ込められている。通話など規制はかかっていて使えないが、出入り口のない巨大な地下迷宮(魔物在住)に放置されている。最大収容人数は二十万人。中央広場が安全地帯になっていて、通路との間に魔物よけの膜が張られている。
そこにはダンジョン都市にある数多あるダンジョンに入れる魔物が種族ごとに勝手に育っているらしい。何かあったら私たちを丸ごとその地下へ移すことも考えているようだ。騰蛇はダンジョン都市の真の管理者として、私たちの安全を第一に考えてくれている。
「魔物がいるから倒せば食肉が手に入るし、負けたら食肉になって食われるだけ。地底湖もあるから飲み水もオッケー。初級魔法も使えるしテントも使える。収納カバンもステータスも使える」
「デメリットは?」
「テントの中に引きこもっていたら終戦が分からない。とはいえ、騰蛇がテントごと放り出すけどね。あとは魔物より弱ければ、生きたまま頭からガブリンチョ」
「魔物の強さは?」
「ここのダンジョンより雑魚種。ネズミにヘビに鳥にトカゲに牛にニワトリ……」
ただし、大きさはダンジョンのボス並みに大きいらしい。地下迷宮に入ったことはないから実物を見たことはない。不確定な情報は出さないに限る。
「地底湖には魚もいるから」
「至れり尽くせりだな」
「だけど外周部は無視。王都もいれてくれるかな? まあ、魔導具で『犯罪者ではない』と認められた人だけね」
地上にしなかったのは戦火をさけてのこと。さらに暑さ寒さから遮れることも理由になっている。
「エミリア、ピピンたちはどうしていますか?」
シーズルの補佐をしているミュレイから確認がはいる。戦火が大陸全土に拡大化した。しかし私はピピンたちも妖精も参戦させないと宣言している。
「これは愚かな人間たちによる醜い争いだ。そんな戦争に、なぜ妖精たちや聖魔たちを戦場に駆り出す必要がある?」
これには身内からも反対された。ピピンたちだ。
「エミリア、私たちは戦場にでて人間たちと戦ってもかまいません」
「いいや、絶対に許さない。私は契約時にみんなと約束したよね、『人間を傷付けるな』と。みんなを闇堕ちさせるくらいなら、私が魔法剣士として前線に立つ」
それには会議に参加していた職人も冒険者も反対した。ただ、私の実力を知っているダイバとシーズルは私の肩をもってくれた。
「エミリアの実力は俺が知っている。エミリアはこの中で上位の強さだ」
私の強さを知っても賛成は得られなかった。しかし、私はある作戦を提案した。それが『狙うは大将!』だ。
「大将が討ち取られれば配下は戦意を喪失する。逆上した者がいたらそいつらも見せしめに倒す。血気盛んな連中が集団で襲いかかっても勝てない相手に、残った兵たちは立ち向かうか? 生き延びたいなら大人しくするしかないだろ?」
最初の侵攻で私は実践した。隊の数は五、私はその中でも中央の本隊を受け持った。向かって左の隊にダイバと右の隊はシーズルとミュレイ。左右の外翼に王都の国軍。私は単騎、ただし涙石のペンダントの中にはピピンたちがいる。
数が少ない魔法剣士は、戦えば周囲に魔法の被害がでる。これが対魔物だからこそ問題にならないのであって、戦場で混戦していれば……
「あ、ごっめ~ん。間違って斬っちゃった~。許してちょ」
「あ、火力が強すぎて真っ黒にしちゃった~。メンゴメンゴ」
なんて冗談みたいなことが起こり得るのだ。
「無理はするなよ」
「分かってるよ~」
そして最前線の兵士に風属性を纏わせた剣を一閃して、右往左往して逃げ惑う兵士たちが開いた人の壁の中へと突入した。
80
お気に入りに追加
8,060
あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います
菜花
ファンタジー
ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。