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第十章
第521話
しおりを挟む「セリシアはランディを諦めきれなくて事件を起こそうとしたわ。でもそれは先見の特異を持っていたランディによって未遂で終わったわ。そしてセリシアと協力者のリマインは村をでていったわ」
「追放? 何をしたの?」
「人を洗脳する薬を井戸に投げ込もうとしたの」
「えええ!!! 操り水ってそんな頃からあったの⁉︎」
「当時はただの薬よ。それもドロッとした液体」
「それが百年かけて改良されたのが操り水ってことか」
あれ? いま何か引っかかる部分が会話の中にあったような……
「エミリア、どうした?」
「操り水……?」
「ああ、当時は薬らしいが」
「……誰がそんな都合のいい薬を手に入れたの? 当時、流通してた?」
「いいえ、そんなものは流通していないわ」
「じゃあ、誰がどこから手に入れたの?」
私の疑問に誰からも回答がでない。百年も前のこと。知ろうにもダイバの過去見はそこまで遡れない。
「おじいちゃんにもらった『世界の歴史』にもそんなこと載ってないし、世界全集にも世界大全集にも載ってない」
「エミリア、薬草図鑑はどうだ?」
腕を組んで椅子の背もたれに寄りかかり天井を見上げながら唸ってたダイバが、ふと思い出したように声をあげた。
「薬草図鑑?」
「ああ、そうだ。百年前に使われたのは洗脳薬だと」
「あ、そっか。薬だったら、何らかの薬草が使われているんだよね」
ここで驚くことを言い出したのはリリンだった。
「エミリア。洗脳薬になるかわからないけど、禁忌として使用が禁止されている種子に『アサガオの種』があるわ。全種類ではないけど」
「リリンのいうとおりです。幻覚の効果があるということで、いま現在は流通が許されていませんが……たしか927ページにあったはずです」
ピピンのいうページを開くと、そこには確かにアサガオの種に関して様々な注意事項が書かれていた。よくある『薬にも毒にもなる』というものだ。
「生薬に使われるために流通してるけど毒になりうる場合もある」
「エミリアちゃん、それはどういうこと?」
「簡単ですよ。通常は下剤になるけど分量を間違えたら下痢になる、ってことです」
ダイバが私の表情を確認すると横から図鑑を奪われた。
「あー、分量を間違えれば腹痛とか起こすのか。まあ、十二時間の効果らしいが」
「ダイバ、そこに洗脳の効果は載っているか」
「ああ、載ってる。軽い症状だが幻覚をみるらしい」
「幻覚か。それでも十分操れるな」
それも麻薬のため依存性があるし禁断症状もでる。摂取が多ければその分強い幻覚が起きる。周りの人が魔物に見えてしまえば、その後に起こるのは混乱による殺戮だ。
「禁忌薬物の使用による追放は当然、か」
そこには自生している場所が書かれている。しかし、それは私たちの仮定を大きく外れていた。
「ユーグリア領の魔の森。何でそんなところに……」
「魔の森、だからでしょ」
魔の森と呼ばれる場所には共通の条件がある。
・森の中に魔素の多い場所(魔素溜まり)が存在する。それはスポットだったり沼だったり。最大のものがムルコルスタ大陸に存在していた国の魔導研究所があった場所。
・凶暴な魔物が生まれやすい。ただ魔物が住んでいる場所は世界各地にある。しかし魔素溜まりが近くにあると凶暴化しやすい。必要となる魔素の量は魔物の大きさによって違う。中にはリーダーとなれる知能を持った魔物に進化する。
(ちなみに知能と知性は違うため、魔人や獣人に進化はできない)
そして討伐で間引きをしないと魔物の襲撃が起きる。
「本当だったら魔物を完全に制圧して魔素溜まりを排除して森を浄化できれば凶暴化が抑えられるんだけどな」
ダンジョン都市では、そうやって周辺にある魔物が棲む森を浄化することで凶暴化させずに共存してきた。ただユーグリア領は、そこ全体が魔の森でできている。冒険者たちの中でも腕利きが頑張っている。しかし浄化させた一部は一年で魔素が溜まりはじめて、五年後には草食の魔物に影響を与えるだけの魔素が溜まりだす。
現状ではイタチごっこだった。
地の妖精たちが向かおうにも、魔素が強いため酩酊に近い状態に陥ってしまった。そして私が近付いたら……弱い魔物が真っ先に反対側へ向けて扇状に広がって逃げた。森の中の混乱も凄かったがその先にある国に逃げ込んだ結果、魔物の集団逃走が起きた。国を駆け抜けてさらに泳げる魔物は海を泳いでいったらしい。それ以降、私はいっていない……「よその国に迷惑がかかる」とダイバに止められるからだ。
いま思えば、私ではなく魅了の女神が一緒だったからだよね。
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