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第十章
第520話
しおりを挟む火龍に呼び出されたのはダイバだけだった。
アラクネに金糸で地中へと連れ去られたダイバは、そのままどこかへ連れて行かれたそうだ。いつもの場所ではなかったらしい。というのも、いまは戦争中であり各国の工作員がどこに入り込んでいるかわからないからだ。
「龍が手に入りづらいから竜人を手に入れて、必要に応じて龍にして各国を攻撃させて威嚇させよう。そんな動きがあるらしい」
「それはサヴァーナ?」
「それ以外の周辺国もだ」
「でも……ダイバたちを捕まえても龍にはなれないよね」
「ああ、先祖返りのシューメリ義母さんも龍にはなれない」
「だって、竜人の先祖は『わるい龍と戦った人間』だもんね」
「それが『龍が人の姿をとったのが竜人』だと間違った情報が流されているらしい」
「それってリマインたちだね」
「ああ、竜人を追い込むためだろ」
「でもさー、なんで竜人の自分ができないことを両性具有や先祖返りができるって思ったのかな?」
考えられるのは、もうひとつの竜人族。
「あのリマインって、サヴァーナに龍の話をしたんだよね?」
「ああ、そう言っていたな。それで龍に守ってもらうってつもりらしい」
「操り水を使ってって話だっけ。…………効くと思う?」
「火龍に確認した。火龍、騰蛇には効かない」
その言い方だと……
「ああ、そっか。聖魔士ギルドがキマイラや空魚を聖魔として使えたのは操り水を使ったからか」
「そういえば、オヤジたちも操り水の被害を受けていたな」
つまり国を越えて大陸をも飛び越えて操り水が使われている。それもたったひとつの国によって。
「ウランベシカでも操り水が使われている可能性があるね」
「ああ、龍を手に入れるためにな」
「その龍は竜人……『わるい子』の方の。だったらあのリマインはどこで知ったの?」
「エミリア?」
「だって、ダイバたちが母国にいた頃はまだ『龍になれる竜人がいる』ことは表にでていなかったんだよね。それなのにダイバたちが生まれる遥か前、おじいちゃんたちが結婚する前にリマインは村をでてったんでしょ。ファウシスでそう言ってたじゃん」
「大陸を渡って旅をしていたという話だったな」
「そのときに旧シメオン国の流民と関わってもおかしくないよね」
セイリアさんにリマインのことを聞いた。驚いたことにおじいちゃんのランディの友人だったらしい。
「ランディに私たち三人は好きになったわ。でも優しくて賢いセシリアが選ばれたの。私はそれに気付いて身を引いたわ。その代わり、私はシリウスと出会ったの」
「シーズルのおじいちゃん?」
「そうよ、エミリアちゃん。でも、そんなに目を輝かせてもロマンスはないわよ」
「そうそう、有名な話よ。偶然手に入れた問題があるけど解き方わかるか? って問題をみせたの。セイリアには下手な慰めよりこちらの方が良かったみたいよ」
そう言ってセイリアから見せられたのは、日本では数独とかナンプレとよばれるもの。それも枠が三枚重ねられたマルチナンプレだ。いまでも問題集を宝箱から手に入れているくらいだ。ダイバも知っているし妖精たちも知っているが、始めると延々と続けて食事も睡眠も忘れてしまい、リリンにこっそりラベンダーなどの香りで強制的に眠らされて、目が覚めてからピピンに怒られる。
だから見せられてすぐにステータスから鉛筆をとり出すと解きはじめた。
「いまでも解けてないけど……エミリアちゃん、解けるの?」
「うん、得意」
「エミリア、ここで解くな。セイリア、これ借りていいか」
「ええ、解いてくれると嬉しいわ」
「やーん、返して~」
「いまは話が先だ。あとで渡してやる」
問題が書かれた紙をダイバに取り上げられて取り返そうとしたものの、ダイバに止められピピンに横から奪われた。
「優先順位は?」
「ナンプレ『ぺちん』……セイリアのお話しが先」
「終わったら渡します」
ピピンに頭部を軽く叩かれた。まあ、いまはセイリアから話を聞く方が大事。
そう頭を切り替えた私とダイバに、セイリアは爆弾を落としてくれた。
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