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第十章
第514話
しおりを挟むダンジョン都市に帰ってきたのは昨日。バラクルに帰宅の報告と夕食を食べにダイバと向かったら、ミリィさん、アゴール、シエラが待ち構えていた。そしていつものようにミリィさんに抱っこされて椅子に座ったら、アゴールとシエラに「「ズルい!」」と言われた。私を膝抱っこしているミリィさんにいっているようだ。
「アゴールはお腹がもう大きいでしょ。シエラはまだ安定していないから悪阻が辛くてさっきまで寝ていたでしょう?」
ミリィさんの言葉は真実のようで、シエラの顔色は青い。そのため、ダイバが私の前に椅子を二脚並べてくっついて座ることになった。そして私の右手をシエラが、左手をアゴールが握る。
「急にダイバといなくなって……心配したのよ」
「私だって同じです」
「エミリアちゃん。みんなが心配するから黙っていなくなるのは禁止よ」
「ごめんなさい」
涙を浮かべて訴えるアゴールとシエラ。ミリィさんには『ぎゅう~』っと抱きしめられた。
「私たち、妊娠してからエミリアちゃんとのスキンシップが足りなかったって反省したのよ」
「ダイバに任せっきりだもの。シーズルは都長になってから忙しくて帰ってこないし」
それはファウシスで正式な手続きを経て手に入れた本屋と、大盤振る舞いでもらった町長の屋敷に兵舎や鍛治師の家、そして保護されてピピンの治療を受けている町長たちを今後どうするか。正式じゃない手続きで確保された危険人物たちから情報収集をしているから。
「そうだわ! エミリアさん、ダイバと同じ部屋で寝たって?」
「ピピンとリリンと白虎と妖精たちも一緒に……」
「ダ・イ・バ・と・同・じ・部・屋・で・寝・た・って?」
「う、ん」
アゴールって、こんなにヤキモチだったっけ? そう思って顔を向けたダイバは困った表情で肩をすぼめてみせた。
「ダイバ、何でエミリアさんと一緒だったのよ」
「仕方がないだろ。宿屋の部屋がひとつしか空いていなかったんだから」
アゴールがダイバを問い詰める。その口調が不倫を知って問い詰めるようで居心地が悪く……はないな。それはアゴールが私の手を離さないから。逃がさないためではなく、優しいその手からは私に怒りがないことを示している。
黙って夫婦喧嘩にならない言い争い(ダイバは落ち着いて説明をしているだけ)を聞いていたら、アゴールから爆弾発言が飛び出した。
「ダイバだけズルい! 私だってエミリアさんと一緒に寝たい!」
その言葉は、バラクル内にいた私たち全員をズッコケさせた。
「あら、私だってエミリアちゃんと一緒に寝たことはないわ」
「私も、エミリアさんと寝る!」
そこにミリィさんが加わり、シエラも参戦する。ここから、私がバラクルの客室に泊まることになった。
「ベッドは隙間なくくっつけて」
「エミリアちゃんの隣は毎日交代ね」
「ぼくも~」
「あら、フィムもエミリアさんと寝るの?」
「ねる~」
《 ねえ、私たちはー? 》
「白虎さんたちも一緒に寝ましょ」
「わーい、いっしょー」
……私の意見は見事にスルー。
「これはエミリアさんが勝手に出かけた罰よ!」
まず、昼寝。そして夜も……
「そろそろ寝ましょ」
「エミリアさん。もう寝ましょ」
「明日の報告……」
「報告書は出したんでしょ。だったらダイバに任せちゃって」
「「「おやすみ~」」」
……強制的に連行されても昼寝をして眠気のない私は、強制的にリリンに眠らされた。
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