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第十章
第508話
しおりを挟むそして、その色々とハーフなエルフは? というと……
《 ヘイヘイヘ~イ、ナニサマのつもりだ。アアア? 》
《 ヨーヨーヨー、よくもウチの姐さんに手ェだしよったなあ 》
《 おんどりゃあ、詫びに指でもツメてもらおうかぁ? アアア? 》
ツッパリの知識をドラマで得たヤンキー妖精たちに凄まれて涙目。
「ちょっと、やりすぎでしょ」
《 物足りねえ 》
《 ついでにエリーもヤッとくかあ? 》
「ちょっ、待って」
止めようとしたエリーさんは、矛先が自分に向かうと頭を押さえてざああっと音が聞こえるくらい素早く後ろに下がる。それも仕方がない。ヤンキー妖精は改造のバイクに乗って、ハーフエルフの上を走り回ったのだ。おかげで頭には何本ものの妖精バイク専用道路が完成していた。
それでも逃げないのはピピンが飲ませた操り水の効果で逃走する発想がないからだ。
《 ヘイヘイヘ~イ 》
《 ヨーヨーヨー 》
妖精暴走族は、ハーフエルフが頭を庇う手の甲をも気にせず走り回る。
「ごめんなさい。許して……」
《 許してもいいと思う~? 》
シーンと静まる。キョロキョロと見回した妖精暴走族は《 『許さない』で決定 》というと、ブオンブオンと音を撒き散らして走り出す。
「ピピン、あの子たちが乗ってるのって」
「元はプラモデルです」
そう、プラモデル。だったもの、と言っていいだろうか。妖精たちが夢中になって完成させたものに魔法をかけて走らせているのだ。ちなみにエンジン音ではなく、DVDから録音した音をグリップにつけて回すと音が鳴るようにしてある。
「バイク以外の音も聞こえる」
パラパ、パラパという暴走族特有のメロディ以外に、パノラマカーで有名なメロディ『どけよ、どけよ、あ~ぶ~な~い~』と、続くパアアアアンという警笛。……たしかにダンジョン都市でも、妖精たちは隊を作って空を走り回る。この音で、何か不穏な動きをしている連中を威嚇しているらしい。たしかに今もハーフエルフは威嚇されて小さくなっていた。
ちなみにいま私たちはピピンが持って帰った魔石で撮影された映像をみながら説明を受けたり質問をしている。たしかに『百聞は一見にしかず』だ。
「ピピン、あの暴走族にペナルティー1」
「何か問題でも?」
「手の上を走ってる」
「ケガはさせていませんよ」
たしかに赤くはなっているがキズにはなっていない。
「ピピン、アイツらに忠告しておけ。やりすぎたら『妖精警ら隊』は解散だと」
「わかりました。忠告をだします」
ペナルティーではなく忠告で話がついたのは、怪我をさせていないからだろう。ただし、チクリと釘をさしておかないと彼らは同じことを繰り返す。皮膚が薄い相手だったら大ケガだ。
ダイバの言葉はそれを考慮してのこと。ピピンは、私がペナルティーを口にしたことも伝えるそうだ。
「自分たちの行為が危険だと理解させるためです」
その後の態度は予想の範囲内だろう。
「間違いなく、ダンジョン都市に戻ったら御神体に泣きながら土下座だな」
「ピピン。あの子たちには今後の仕事に支障がでるから、謝罪は報告会でするように伝えて」
「はい、わかりました」
ダイバが言った『未来予想』に私が追加で指示をすると、教祖も同じ結果に思い至っていたらしく神妙な表情で頷いた。
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