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第十章
第504話
しおりを挟む『どうやら上手くいったようだな』
『ええ。あとはセイリアの居場所を吐かせて手に入れるだけです』
『やはり同族には口が軽いようだ。おかげでサヴァーナ国の益々の繁栄が約束された』
『サフィール国の独立も上手くいきました。わざとコルスターナに与して内部から崩壊させる計画が上手くいきました。そのために聖魔士には神獣たちを与えて聖魔士くずれを生み出そうとしたが……それも失敗に終わった』
『神獣に恨まれて魔物化した聖魔士くずれは神獣並みの能力を発揮する。そのため操り水を与えてサヴァーナ国の国獣にするつもりだったのを……』
『しかし、セイリアを引き渡せば龍が守護になるという。すでに火の龍がきているらしい。それに操り水を飲ませれば…………ハハハ。これでサヴァーナはこの大陸を、そしてこの世界を手中に収めることができる』
『はい、そのときは是非ともサフィール国も』
『ハハハハハ……』
『フフフフフ……』
「だって」
リリンが植物を通して話を聞かせてくれていた。生放送だけど、向こうの声は聞こえるだけで姿はみえず、こちらの声は届かず。まるでラジオのようだ。
「リリン、もういいぞ。止めてくれ」
「はあい」
ここは結界を張った宿の客室。私とダイバはリマインを信じたわけではなかった。こう簡単に竜人と会えるはずがない。それもダイバたちが連れてこられた中にリマインは含まれていない。女子供だけだったのだ。
では、リマインはなぜファウシスにいる?
あの店は操り水の影響を受けない場所にも関わらず……不自然だ、さまざまな意味で。
「事情が詳しすぎる。そして誘動しすぎ。愚かな部下の一件は仕方がないのだろうけどね」
自分で何も考えずに聞くだけの部下。だからこそ『サフィールの侵攻』がもれた。そのままあの町長の屋敷に入ったのも偶然だろう。
それ以降、つまり本屋の中でのことは完全に誘動だ。ただし捜索は二手に分かれたまま。町長と門兵たち、つまりサヴァーナ国とサフィール国が関わっている操り水の関係者たち。
それとは別にリマインとその仲間がサヴァーナ国とウランベシカ大国。こちらはセイリアさんの身柄を引き渡す代わりに、龍を国獣として手に入れるための契約をしているのだろう。
「ねえ、ダイバ。あのリマインって、ホントに竜人?」
私と同じ疑問に至っていたのだろう、「お前もか」と呟いた。
「お祖父ちゃんたちだけでなくコルデさんやフーリさんたち、お父さんたち世代でも知ってること。それなのに、なんでお祖父ちゃん世代のリマインはなんにも知らなかったんだろうね。『今のバラクビルには竜人がいない』ことも、龍と竜人の関係も知らない」
ダイバはバラクビルで起きた戦争も、ウランベシカ大国のことも話していない。ただ「ムルコルスタ大陸に渡ったときに、入国の混乱で家族とはぐれた」と話しただけだ。上辺でしか話を聞いていない。だから『ムルコルスタ大国ではぐれたのに、何故こんな世界の果てにいるのか』と思い至っていない。
「ダイバが結んだ売買契約書は正当なもの?」
「ああ、それは間違いない」
「じゃあ、それは丸ごとダンジョン都市に移築しよう」
「本屋を開くのか?」
「違うよ、図書館。そうしたら寄贈した本も置けるでしょ」
簡単に図書館の説明をするとダイバも同意してくれた。
「移築は任せて」
《 私たちも手伝うよ 》
リリンと地の妖精たちが協力を申し出てくれた。
明日が楽しみだ。
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