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第十章
第503話
しおりを挟む「君たちのいう『バカな見かけだけを磨いたアホ娘』は、隣国の王子に見染められて結婚した」
「私は王子様に見染められて幸せになれるの~、とでも喜んだんじゃない? それもお姉さんたちを見下して」
「君はその光景を見たのか⁉︎」
リマインさんが驚くが隣に座るダイバが私の頭を撫でる。
「過去見は俺の特異だ。こいつは洞察力が高い。姉妹の性格、そして見染められた話を聞いて推察したのだろう」
「姉妹で育ったら、末っ子の方は追いつきたくて努力家になるか。オツムで勝てないなら見かけを磨くか。大体、その二択だね。ホントは内面を磨くのが一番だけど、そこまでオツムは良くない。……さっきの話を聞く限り、性格は矯正不可能・再生不可能。根性があるのは認めるが、ひねくれ曲がって引っ繰り返って胡座をかいて『動かんぞ!』と意思表示してるから修正不可能。処刑台一直線だね」
リマインさんが目を見開く。言葉は出ない。処刑台一直線、と言われたからだ。しかし国の拡大、それに伴う死者数。どう考えても、竜人の力をもってしても。急激に広がった国土を正しく管理できていないだろう。……内部崩壊も近いハズ。
「そっか。捕まったお祖母ちゃんたちが無事なのって、シーズルのお祖母ちゃんが見つかってないからだ」
険しい尾根。人はもちろん竜人でさえ自力では降りられないそこは自然の牢獄。
「セウルたちはセイリアさんを見つけるために奴隷にされた。だってイトコの曾孫、竜人は血が呼びあうでしょ」
ダイバとアゴールから聞いたことがある。竜人は同族同士、血が呼び合うもの。そしてアゴールと死んだ兄はダイバのひいお祖父ちゃんと同じだと。その血はシーズルにも繋がっている。
「ただし、四人の身柄を手に入れたのは竜人ではない私。ボンジョン・レイオン・グラスを操って私の農園を襲った理由は四人を取り返すためだ」
あの三人はいやしの水ですでに回復している。やはりファウシスに行ったときに屋台の料理を食べたらしい。
「急に三人ともダンジョン都市に帰らなきゃいけない気になって。帰ってきて、どうしようかって話してたら知らない男たちに無理矢理押さえつけられて身体を乗っ取られた」
「そいつ、エミリアの農園に攻撃を始めたんだ。でもエミリアの農園は妖精たちがいる。そう思ったら妖精たちが止めてくれた」
怖かったと泣く彼らはまだ治療院にいる。アフターフォローの真っ最中だ。……この操り水の一件が終結すれば、三人以外にも操られた者たちを解放できる。
「サヴァーナの侵攻、それとは別にサフィールも侵攻してくるらしい。両国の共通点は?」
「サヴァーナとサフィールは特にないな。国境が隣り合っているくらいか。それにサヴァーナは国として成り立っているが、サフィールは違う。サフィールは国だった頃、コルスターナに吸収されてすでに地図上から消えた国だ」
「ってことは、ゴタゴタついでに独立宣言でもして国を名乗ったかな?」
「たぶんな」
そうなると戦争自体も理由が変わる。サヴァーナが操り水を作り、行商人がサフィールで売る。薬をこれで飲めば……などという謳い文句もあったかもしれない。新薬の実験場になっていた可能性もある。急に戦争が終わった理由も、操り水が関係していると考えれば納得できる。大きな二国が組んで戦争を起こす理由……
「セイリアさんの捕獲」
それ以外にないだろう。
「店を閉めようと思う」
「どこへいくの?」
「まずはセイリアに会おうと思う。どこにいるか知っているなら教えて欲しい」
「ここの本は?」
「ああ、もういらないな。欲しかったら無料であげるぞ」
「店ごと?」
「ああ、欲しかったらこの店丸ごとやろう」
ダイバが譲渡契約を済ませると金色に光った。
「……これで交渉終了だ」
「それで……」
「迎えが来るよ、明日か明後日に」
私の言葉に満足そうに頷くリマインさんを残して、私たちは宿へと帰った。
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