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第十章
第498話
しおりを挟むダイバたちの話し合いは早くに原因が分かったことで決着した。次にすることが導かれたことで、数日の待機が決まっている。あとは王都から向かった後発隊と合流するだけだ。
「下剤をのんで身体をリセットさせるらしい」
「原因とか聞いた?」
「ああ、あの飲料水が原因で間違いない」
ダイバが肯定する。それは仮定から脱したということ。
「じゃあ、外を歩き回っても空気感染はしない?」
「それは大丈夫だ。しかし、追手には気をつけろ」
「じゃあ、認識阻害で視認できないようにする?」
「それは危険だ。少なくとも俺たちは家族を探しにきたんだからな」
「じゃあ、何するの?」
「メシの時間まで二時間は昼寝。今日は宿に着いた初日だ。冒険者らしく、ゆっくり休め」
リリンが編み上げ靴の紐を外して脱がせてくる。そしてピピンに全身を浄化されてベッドにぽてんと倒される。同時にリリンからハーブのいい香りがして、疲れていた私はすぐに眠ってしまった。
午前に会議、途中で飛び出してキッカさんたちと合流。そのままファウシスに入ったのだから、疲れてて当然。という私は、リリンに揺すられて目を覚ました。
「起きたか」
「んー? ダイバ?」
ダイバは休まなかったのか、床にシートを広げて何かしていた。……薬草?
「これって、みたことがない」
「これか? これらはここに住んでる妖精が出した。どうやら、この宿を含めてこの植物が成長した木を使って建てられた場所は操り水の効果が現れていないらしい」
「これって薬草じゃないの?」
「ああ、木の若葉らしい」
一見すると薬草にみえるこれが……
「エミリア。この種を預かったから、今度テントの庭に植えて育てるわ」
リリンは地の妖精と育てる気でいるらしい。この世界の植物だからテントの庭、温室では育てない。それは地の妖精たちが決めたこと。異世界の植物と混ざることが良い結果をもたらすとは限らないからだ。
「んんんー?」
「どうした?」
「こーのトゲトゲ葉っぱ。どっかで見たぞ~」
ノコギリ♪ ノコギリ♪ ぎ~こぎこ♪
ヒイラギ? ナナカマド? セイヨウナナカマド。み~んな魔除けの木♪
歌っていて気が付いた、『魔除けの木』といわれるのに共通する点、それはノコギリのような葉がついていること!
「エミリア、ヒイラギを知っているんだな?」
「うん、悪い鬼が家に入ってこようとするのを、このチクチクが追い払うの」
「じゃあ、コレになにをくっつける?」
「焼いたイワシの頭」
節分ではそれを飾る。焼いたイワシの頭には諸説ある。臭いで鬼を追い払う説。そして逆に誘き寄せてヒイラギで目をチクチク刺す。
《 絶対、後ろはイジメっ子が考えたんだよ 》
《 まだ『痛い思いをするから逃げなさーい』って方がいいよね 》
《 それでも近付いたらチクチクされて泣きながら逃げてくの 》
「そうそう。その方がいいよね」
「そうねえ。いうことをきかない悪い子にはトゲトゲのムチの方がいいわよね」
そういってリリンが出した触手にはバラのトゲが生えていた。
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