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第十章
第486話
しおりを挟む「そんな信頼関係の中に行商や仕入れで出る人もいる。そのときに『試作品なんだがいろんな町の人たちの意見も聞きたい』と言って渡された人もいた。……それが、あの商人ギルドで女性冒険者が渡されたという装飾品、そして境界線を越えられない男が身につけていてジズが破壊した装飾具だよ」
エリーさんの一件で危機感を芽生えさせた妖精たちの願いから、キマイラや神獣たちが境界線を強化しなければダンジョン都市に持ち込まれていた物だった。
「女性冒険者に渡した商人は『商人ギルドにきた女性冒険者に渡してくれ』と言われたらしい。そして商人は偶然やってきた女性冒険者に渡した。……気付いたと思うが、狙われたのは私だ。ただし、私は以前トラブルから担当だったヘインジルが来るだけで私から向かうことはなかった。そして国外のギルドに移ったことで没交渉」
《 ここで追加情報。当時私はまだファウシスにいた。アクセサリーにしたのは女性……エミリアなんだけど、身につけると思っていた。失敗した時点で起動させて皆殺しにしようとしていた。エミリアたちは知ってるけど、狙いはバラクル。……竜人目当てだったんだ。ただここの魔導具が邪魔をしてファウシスからは起動できなかった。少しずつ近寄って、ここの外周部まできた。そしてアクセサリーが壊れた。ファウシスで連絡を待っていた連中は、王都にいた連中から失敗を知って、慌ててファウシスから撤退した。連中の話から向かったのは隣国サヴァーナ。薬草に特化した国だよ 》
すでにサヴァーナで採取できる薬草はほぼ採取済み。元々エイドニア王国のあるムルコルスタ大陸では簡単に見つかる薬草で、植物のダンジョンでも採取が可能だったりする。
「サヴァーナは薬草に特化していて、記憶をなくす前の私が作ったレシピを一番使ってる。ただし、この大陸で。世界的にみると一番はエイドニア王国だよ」
私は『以前エア、今はエミリア』ということを受け入れ、そのことをこのダンジョン都市でも受け入れてくれている。ただし、思い出していないことも理解してくれて、私をエミリアで呼んでくれる。……だから、私も自然と自分を受け入れられたのだろう。
「サヴァーナで流通しているレシピの中で一番多いのが操り水。ミリィさんの話では一時期エイドニア王国にいた私をさらうために使われたそうです。その出どころがサヴァーナであり、私を欲していたとしたら……?」
《 補足しまーす。エミリアは忘れているけど、操り水の対策としてエミリアのレシピ『いやしの水』が有効です。いやしの水には操り水の効果を消す作用があるのは確認されました。だからエミリア、心配しなくて大丈夫だよ。水の妖精たちがピピンの指導でいやしの水を作れるように練習しているからね 》
私の表情をみて安心させるように声をかけて、机に乗せた私の手に優しく重ねてくれる。
「それに関してはオヤジから話を聞いた。王都の貴族たちはエミリアの薬師としての能力を高く評価していた。そして貴族がエミリアをさらって家に閉じ込めようとした。そのためにパーティを皆殺しにしようとした。しかし、ここと同じでエミリアに貴族は接触できない。そして行き場をなくしたエミリアを操り水で意思を奪い、サヴァーナへ連れてくるつもりだったことまでわかっている。皆殺し計画は失敗し犯人たちは一網打尽になった。その犯人たちの口からサヴァーナの名が出ていたそうだ」
つまり、一度は失敗した私の誘拐劇を再開しようというのだろうか?
「連中はエミリアのことに気付いていない。ただ妖精がいることで質の良い薬草が手に入ると思っている。そのため聖魔師としてエミリアを狙った」
ここで竜人も住んでいることも知り、装着者に呪いが効かないようにしていた。
「それが間違って別の女性冒険者の手に渡ったことで回収しようとして……失敗したということだ」
その代償が製作者たちの死だった。
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