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第十章
第485話
しおりを挟むこの日は『エミリア教の信者』を増やしたところで時間切れ。キッカさんたちの情報が足りないため、三日後に再集合。その間に集められる情報をかき集めようということで解散した。
「エミリアは妖精たちからの報告書を読んでおいてくれ」
妖精たちは私に提出するためか漢字も使って書いている。……私とダイバ以外に読めないのだ。ちなみにコルデさんはキッカさんたちの情報収集に回っている。
「妖精は読めるんだな」
《 読み書きできるー 》
「それでエミリアとダイバも読める?」
「読み書きできる」
「エミリアほどではないが、困らない程度に」
そしてダイバからステータスも漢字が使われることを知り試すことになった。ダイバが教えたのは『持ち物』。ステータスにも持ち物欄はあるし、日常でも使えるという理由からだ。……そして再集合の日。
「完全に変わったぞ!」
「俺は収納も完全に覚えたら漢字になった」
「ステータスが読みやすくなったぞ」
妖精たちに個別で漢字を教わった職員もいたようだ。ただ、妖精たちも理解しているようで、その日の仕事が終わるまでは一切教えようとしなかったらしい。
《 だって、仕事でその字を使っても読めないでしょ 》
若干一名、漢字を書いたと同時に吹っ飛ばされてイスごと後ろへひっくり返ったらしい。
「久しぶりの衝撃だった。おかげで覚えた漢字を忘れた」
《 こんの大バカ者は予算委員会の書類に漢字を使おうとしたんだ。そんなことをしてみろ、読めない者が『知らなかった』って間違った金額で予算を組んで支給するじゃないか! なんのために僕が細かく計算したと思っているんだ! 》
「すみません。本当にすみません」
《 今度やったら自分で計算させるからね! 》
このやりとりを聞いていた全員が呆れていた。それも仕方がないだろう。
「俺たちの予算って、妖精たちが管理していたんだな」
「っていうか、俺たちっていつから妖精に頼ってるんだ?」
「そのうち、庁舎は妖精たちに全部管理されるんじゃないか?」
「すでに街路樹の管理は発注以外は妖精が一手に引き受けているからな」
最初は手伝いだった妖精たちが、今では管理職に近い仕事を任せられているようだ。ちなみに職員を説教しているこの妖精は、小さな専用のソロバンを手にしている。……昭和時代の事務員のようだ、と思った私は悪くない、たぶん。これでアームカバーをつけて黒縁メガネをかけたら完璧かもしれない。
「さて、漢字報告は休憩の時間にでもやってくれ」
シーズルの言葉に全員がピタッと止まる。これから重い話になることを誰もが、もちろん妖精たちも気付いている。
「エミリア。先日の妖精からの報告の詳細を」
《 そのあと、私たちに追加や補足させてもらえる? 》
「わかりました。それから質問タイムにしましょう」
シーズルの言葉に私は頷いて、ファウシスに滞在していた妖精たちからもらった報告書の内容を伝える。前回の会議で、無意識に誘導されてそれが正しいと信じこんだ一件から、本人たちがそうと思っていなくても誘導されている可能性を理解した。
ファウシスには当たり前に使われている言葉がある。それは詐欺師の常套句「絶対に損はさせません」「リスクはありません」。そして誰かが「じゃあ買うわ」というと「私も買おうかしら」となっていく。
「妖精たちにとってそれは異常にしかみえない。そりゃあそうだろう、売り手に真っ先に購入の意思を伝えた者は仲間だ。協力料を受け取っていると思う。そして、それを知らない者たちが買っていくと完売を理由に閉店。露店だから次の日には違う者が店を開いている。もし不良品や三流品、ニセモノだったとして苦情に行ってもすでに前の店はない」
中には卸業者をしている者が「いつものお礼です」といって渡した物に不審物が混じっていても気付かない可能性もあるだろう。気付かれても無料でもらった物に苦情を言う者はいない。不良品だと自己完結して黙って破棄すればいい。
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