私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十章

第475話

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「……ダイバ、か」

ノーマンがダイバに気付いて感情のない顔を向ける。と同時にドッゴーン!!! という音を轟かせて地面に埋もれた。

「てっめえ!!! なにが『ダイバか』だ! どのツラ下げて俺の前に立っていやがるんだ!!!」

続けてガシガシッと踏みつけるダイバに、消えていたノーマンの表情に自我が戻り始めたようだ。

「やっ、まっ、あっ……い、いかげんに……しっっっっっろぉぉぉぉ!!!」

ダイバの足を掴んで振り上げる。ポーンッと飛ばされたダイバは一回転して着地すると今度はノーマンを蹴り倒して頭に足を乗せてグリグリとねじる。

「おい、何様だこのクズが! あれほど愛してくれたスワットたち家族を裏切っただけじゃなく、俺の大事な妹まで裏切って泣かせやがって!!! それも俺に『シエラにプロポーズしたい。必ず幸せにするから協力してくれ』って土下座した夜にいなくなりやがって!!!」

ダイバのいかりは当然だ。あのあと、私にシエラに贈る指輪の相談にきたのだ。
その帰りにアウミの中の女神の手にかかったのか。退職手続きをしたノーマンは家に帰らず、そのままダンジョン都市シティから出て行った。

「シエラ。ノーマンは私にも相談にきたんだ。『指輪を贈りたい』って。結婚式は金がないからすぐに挙げられないけど、せめて指輪だけはって」

シエラに向けていた視線をダイバたちに……ダイバの足の下で踏みつけにされても反撃しているノーマンに向ける。あの様子なら取り返しているだろう、奪われた記憶を。失われた未来を。



「わしらもいこう、シエラ。行って、いまの気持ちをぶつけよう」

スワットに促されてシエラが二人の元へと向かう。スワットに支えられるように近付くシエラに気付いたノーマンが小さく「シエラ」と呟いた。

だ、バカモノ!」

そう言って、いまだにダイバに踏まれたままのノーマンの側頭部に踵落としをするスワット。シエラを支えているため、ゲンコツを落とせないからだろう。

「お前みたいな薄情モンを、信じて愛して今でもお前を信じてる! そんなシエラを呼び捨てにするんじゃない!」
「シエラちゃんは今も私を『お義母かあさん』って呼んでくれるのよ」
「この親不孝モンが。結婚してから死んでくれれば、かわいい義娘ムスメが増えたというのに」
「そうよ、どうせなら子供も作ってからだったら……こんなに悲しまなくてもよかったのに……」

ノーマンの姿から後悔は垣間見ることはできるが悲壮感は見られない。元の家族関係に戻ったようだ。周囲の人たちもダイバたちの様子を見て、真っ先にぶん殴ってぶん殴ってタコ殴りにして袋叩きにして正気に戻してからもさらに袋叩きにした。おかげで奪われた記憶を無事に取り戻せたようだ。
……これが最後だと思ってのことか。
それでも多数の謝罪や感謝の声が涙とともに聞こえてきた。
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