私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第463話

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「それで、エミリアは元々記憶がなかったこともあって問題はなかった。まあ、記憶がなくなっても妖精やピピンたちがいる。……当の本人は記憶がなくなっても気にしてないから、問題にはならなかったな」
「気にはするよ~。この人に甘えていいのか。この人は『けっちょんけっちょん』にしていいのか、この人は穴掘って生き埋めにして栄養にしていいのか、栄養にすらならないから焼却処分にするのか」
「最初のひとつ以外は『記憶をなくして気にしている』とは言わん」
宝石の聖獣カーバンクルをもう出していいのか、悪いのか」
「まだ終わってませんよ」
「ヘインジルのけちぃ」
「提出された『妖精の庭建設計画書』を却下しますよ」
「来年になったらシーズルが許可してくれるもーん」

ヘインジルがシーズルに顔を向ける。その目が笑っていない。

「ま、騰蛇たちからの依頼だ。理由があってはぐれた妖精が、一緒にいた仲間たちを探して見つけたんだ。ひどい目にあったらしくて、今は『妖精のたまご』に入って癒やされている。妖精の庭は、妖精たちの棲家だ。妖精のたまごで心が落ち着いた者たちが眠る『妖精のゆりかご』と、妖精たちが休む大樹。そこには騰蛇たちが認めたものが管理をしてくれる」
「その認められた方は、信用できるのですか?」
「ああ、それは大丈夫だ。今までエミリアを守り、今はアゴールの腹の中で狙われた赤ん坊とアゴールの二人を守っている」

ダイバの言葉に周りがざわめく。ああ、不確かにしか言えない存在のことだが、それは不安事項からではない。

「それって出産までだろ?」
「その前に次の居場所を作ってやらないと」
「それを却下するのかよ」
「「「ヘインジルのけちぃ~」」」
「っだあああ!!!」

みんなの冗談にヘインジルがブチ切れる。しかし、商人ギルドのギルド長と一癖も二癖もある冒険者たちと渡り合える庁舎の職員、それも各署のおさたちでは経験値が違いすぎる。

「言いたいことがあるなら言えばいいでしょう!」
「ヘインジルの」
「けちぃ~」
「妖精たちの」
《 敵ぃ~ 》
「よって」
「「「みいんなの」」」
《 敵ぃー!》

ヘインジルが妖精たちの集中攻撃を受けている。魔法は使わないけど、今日は《 妖精の庭のことは自分たちが説明して認めてもらう 》といって集まっていた。そんな中で話も聞かずに一方的に却下を匂わせれば……

《 天誅 て~んっちゅ~ううう! 》
「そりゃあ、そうなるよな」
「「「うんうん」」」

『口は禍の門』とはよく言ったものだ。



天誅という名のお仕置きをくらったヘインジルが、クラクラと目を回している隙に一大案件が多数決で認可された。

「妖精のお家作りに賛成の人~」
《 はーい!!! 》
「「「はーい!!!」」」
「満場一致で可決。では『妖精の庭建設計画書』の企画案のとおり、エミリアの農園の隣に妖精の庭を建設する許可を与えます」

シーズルが議長を乗っ取って行われた採決で全員が拍手で締める。

「な、なにを、して……」
「採決」
「認めて……」
「議長が寝てたから議長代理が採決した」
「ああ。認可されたな」
「全会一致だ」
《 もう決定は覆りませーん 》

くっぱ、くっぱ。ヘインジルが酸素を求めて口を開け閉めする。

「酸素が足りないんじゃなくて、声が出なかっただけです!」
「じゃあ、声でたんだから良かったじゃん」
「呆れていただけです!」
おとこは広い心を持たなきゃ」
《 そうだ、そうだー! 》
「「「そうだ、そうだー!」」」

妖精たちはともかく、なぜかみんなも同じように盛り上がっている。

「そりゃあ、ヘインジルが宝石の聖獣カーバンクルを出させなかったからだろ」
 
それだけで妖精の肩をもつとは。ということは……

「エミリア、宝石の聖獣カーバンクルを交渉のネタに使うなよ」

……なぜバレた?
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