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第九章
第462話
しおりを挟む「以上の点から、彼らが選ばれたのではないかと思っている」
ヘインジルの説明に誰もが言葉をなくす。そのうち、視線が私に向けられていった。
「なに?」
「エミリアは、孤独じゃないのか? その……」
不躾なセリフは、隣に座った仲間の強い視線によって尻窄まりしていった。
「たしかに私が狙われたことがあるよ」
「お、おい。エミリア……」
ダイバが慌てて私の発言を止めようとする。でも「大丈夫」とだけ言って、みんなに顔を向ける。
「以前、大きな地震が襲ったよね?」
そう確認すると「何年か前にあったアレか」などと言いあって全員が頷いた。
「あのときね、私、夢の中で閉じ込められたの。パニック起こして、閉じ込められた箱を内から私が、外からも妖精たちが助けてくれて壊せたの。それが地震になったんだけど……。そのときに、夢の中で壊れた箱の外に女の人がいたの。カアアアッて気がたってたから、引っ叩いて、拳骨で殴って、蹴っ飛ばした。妖精たちが夢から救い出してくれたけど……」
「じゃあ、エミリアが真っ先に狙われたってことか」
「…………そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「しかし、当時は」
「ああ、ダイバ。大丈夫だ、わかっている」
「エミリアが狙われたにしろ、妖精たちの妨害があって無事だった。敵、といっていいのか? まあ、そいつらの手にエミリアが落ちずにすんでよかったというか」
みんなもそういって、私の無事を……
「だいたい、妖精たちが味方についてるエミリアに手を出して」
「「「世界が吹っ飛ばなくてよかった!!!」」」
「えー! 安心するのそっちー⁉︎」
私が大声で叫ぶと笑いが起きた。
「エミリアはちゃんと相手に仕返ししただろ?」
「うん、した。ついでに『今度はどっかの大陸を沈ませる』って脅しもかけた」
「……おい」
呆れるダイバの姿にさらなる失笑が。
「まあまあ、ダイバ。こうして笑えるだけでも幸せだと思えって」
「エミリア。今度はダイバが吹き飛ばしてくれるらしいぞ」
そんな声があがるとダイバが大きく息を吐く。
「そのときが来ないといいけどな」
「無理っしょ」
「……だよなあ。トラブルを押し付ける神獣どももいれば、トラブルを運んでくる火龍もいるし。何よりトラブルを見つけるとプールのように飛び込むエミリアと、トラブルを見つけたら喜んで制裁するリリンたちに、トラブルでもないことをトラブルに悪化させる妖精たちがいるからなあ」
「あーっ、ひっどーい。アゴールだって魔法ぶっ放すじゃん」
「いつだ?」
「奴隷エルフが生存中に借金を返せないようだから、エリーさんが連帯補償人たちを連れてきたときに」
「ああ、開口一番に『お前が奴隷にした奴らを返せ』って言ったときか」
ダイバがそのときのことを思い出したようで苦笑する。
「おいおい、お前ら。なに物騒な話をしてるんだ⁉︎」
「なにがあったんだ?」
あれ? 話してなかったっけ?
そう思っていたら、ダイバが簡単に説明した。
「エミリアにケンカを売った連中に、怒ったアゴールが一瞬で氷柱をぶっ刺した」
あちこちで悲鳴があがる。簡単に思い浮かぶ惨状だ。
それは『氷の針』という魔法。太さも大きさも区々に変えられて、髪の毛のように細く棘より小さなものを何十本でも打ち込める……ダイバが。それに暗の妖精が重力魔法をかけて……ズブズブ、ズブズブと体内を進んでいく。
あれは受けた張本人も痛いが、視覚的にも痛みを感じる。私がそれをみたときは、ダンジョンの魔物が被害者だった。
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