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第九章
第459話
しおりを挟む《 これ、エミリアのー 》
そう言って暗の妖精が私も分厚い辞典をくれた。手紙も添えられている。
「なにコレ?」
思わず漏れた言葉にダイバが心配して近寄る。分厚い辞典には『世界の歴史』と書かれた文字が漢字と共に書かれていた。
「ダイバ……」
「ああ、コイツはこの世界の言葉ではない。……どういうことだ?」
夢で漢字に触れてきたダイバは漢字を知っている。さらに、私の妖精たちは私のタブレットで本を読むため漢字を覚えた。そしてお得意の『不思議なオツム』で漢字の知識を拡散して持っている。
しかし、この世界に漢字はないはずだ。
「ちょっと、エミリア貸せ」
そう言ってダイバが辞典を手にしてコルデさんたちに駆け寄る。
「オヤジ、コレを読めるか⁉︎」
「ん? ああ『世界の歴史』だろ? これがどうした」
「あら、漢字なんて久しぶりにみたわ」
「国を出てから一度も目にしなかったものね」
コルデさんだけでなくフーリさんたち親世代は普通に読めるようだ。しかし、一緒にいるシーズルやシエラは漢字を読めずに四苦八苦している。
添えられていた手紙の封を切る。中には普通に漢字を混じえた手紙が認められていた。
「ダイバ、漢字は『この世界では廃れた言語』だって。漢字の文化が残されているのは、一部の竜人と旧シメオン国の流民、旧式の文化をもつ一族も使っている。そして読めるのは言語学者。今後、もし手紙を送ってくるなら漢字を含めるといい。もう一種の竜人たちは口語による伝承で文字の文化はないようだ。ここにいるその一族出身は、文字は読めるが書けはしない。漢字は理解していない、だって~」
戻ってきたダイバから辞典を返されて、代わりに読んでいた手紙を渡す。
「うわっ、ここに『漢字が読めるかどうかで知能の差が出る』って。知識じゃないのかよ。あの漢字がマジでここまで言われてるのか」
「まて! おいダイバ、お前たちには漢字を教えてないぞ」
ダイバが普通に手紙を読んでいることに、コルデさんが不審そうにダイバを睨む。そして漢字が読める一族に『旧シメオン国流民』が含まれていたことで疑われたようだ。
「コルデさん、漢字なら妖精たちも読めるよ」
《 うん、読める~ 》
《 だからダイバに教えたー 》
《 ピピンたちも読めるー 》
「ああ、当時は妖精たちに『脳筋』だなんだと酷い揶揄われ方をした。しかし、漢字が読めるようになったら、ステータス内が少しずつ漢字に変わっていった」
「漢字があると読みやすいよね」
「それは否定しない。しかし同じ漢字で読み方が違うとか、慣れるまで混乱したぞ」
妖精たちが、コルデさんやフーリさんたちの手紙をみて指をさす。
《 元気か 》
《 昔から寒いの苦手だったけど風邪をひいてない? 》
「こらこら。人の手紙を声を出して読むな」
《 はーい 》
《 ごめんなさーい 》
ダイバに注意された妖精たちが謝罪して離れていく。しかし、これで妖精たちが漢字を澱みなく読める証明にはなった。そして、ダイバが読めるのも。
ダイバは夢でみた漢字に興味を持って、漢字を覚えるようになった。たしかに『漢字が読めるかどうかで知能の差が出る』という点ではあってる気がした。
それにしてもダイバのおじいちゃんって、このことをいつ夢でみたんだろう。用意された手紙の量が半端ないんだけど……
ダイバたちはこのあと地上に戻ってから、何日もかけて手紙を読む日々が続いた。
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