私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第456話

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「あ、地上にいるヘインジルから連絡だ。『決起は失敗した。なお、被害はなし』だそうだ」

シーズルの言葉にほぼ全員が安堵のため息を吐いた。

「シーズル……なに、その情報」
「ん? 二国が争っていると言っただろう?」
「うん、聞いた」
「それにあわせて、各地で蜂起したんだ」
「んで?」
「まあ、都市まちには十人ほどいたが、そいつらが魔法で制圧しようとして失敗したんだ」
「それって……あったりまえじゃん」

呆れた私に妖精たちが《 あー!!! 》と叫ぶ。

《 あのね、エミリア 》
《 私たちがぐーすか寝てたエリーを回収したときなんだけど 》
「もう、またあ⁉︎」
「エリー、黙ってろ」

エリーさんが口を挟むと、アルマンさんがキツめに注意する。大事な話に口を挟むのはいいことではない。大事な部分が抜けて伝わってしまうからだ。

「それで、エリーを回収したときに、どうしたんだ?」

ダイバが話をうまく進めてくれている。妖精たちも話が脱線しかけて何を話そうとしたのか忘れていたようだ。ダイバの誘導でホッと安心した表情をみせてから頷きあった。

《 エリーを回収したあとに、三人が農園にきて魔法をかけて失敗してた! 》
「それは誰? 知ってる人だった?」

……いつもおしゃべりな妖精たちが慎重すぎる。

《 エミリア。……ボンジョン、レイオン、グラス、の男子三人だよ 》
「え……? あの三人? なんであの子たちがの?」
《 目がね、おかしかった 》
《 目がうつろなんだ 》
《 でも、魔法が効かなかったときにしゃべった声がヘンだった…… 》
《 うん、『しゃがれた声』だった 》

三人は孤児院を卒業した子供たち。男の子だから、新しい国王を「助けてあげる」と言って、他の子たちと王都に向かった。声変わりしたとしても嗄れた声にはならないだろう。

「それで三人は?」
《 気絶させた 》
《 うん。様子がおかしい人は倒しちゃってもいいんだって 》
「誰がいったの?」
《 みんなー 》
「みんな?」
《 うん。おかしいと思ったら声をかけてはいけないって 》
《 直接戦ってはいけないって 》
《 うん、魔法も使っちゃいけないって 》
《 だから寝かせてきた 》
《 だから倒してきた 》
《 だから声をあげたんだ! 》
《 『ここにがいるよー!』って 》

『エリーさん捜索隊』の妖精たちが、『妖精ネットワーク』で伝えたらしい。

《 うん、そうしたらヘインジルを連れてきた》
《 ヘインジルが「ありがとう」って言ってくれた 》
《 そのお礼に、エリーを封印箱から出してくれた 》
《 箱はヘインジルが持っていった 》
《 でも、まだ仲間がいるかもしれないから『しぃ~』だって 》

そう言った妖精たちは、人差し指をたてて口にもっていき『しぃ~』と言い合う。それを見ていたフィムも「しぃ~」と笑顔でマネをする。そのうち、妖精たちはフィムと一緒に「しぃ~」と声を合わせて遊びだした。可愛くて微笑ましい。
この子たちはそう言われて、素直に『今まで忘れていた』らしい。


「エミリアさん、その三人たちは?」

ああ、知らないよね。あの三人はミスリアたちと王都に向かったんだ。コルスターナの三人の遺児が王都に作られる孤児院に入るから。仲良くなったから心配だって。

「孤児院を卒業した冒険者の子たちの半数が王都に向かったんだ」

ダイバの説明に『鉄壁の防衛ディフェンス』の皆さんが頷く。

「その『三人の遺児』というのが、結界石に属性が作られた?」
「ああ、そうだ」

コルデさんの言葉にダイバが頷く。

「あの子たちはこの件に関わってない。今もヘインジルたちと動いている。こいつは知られてないが、あの三人は大人たちの道具にされかねないため、エミリアに操られないためのアクセサリーを作ってもらった。ステータスに入れていても起動するやつだ」
「今、あの子たちは保護も兼ねて庁舎内勤務。アゴールと働いていたっけ」
「ええ、私たちと同じ部署ならダンジョンに入れるし。ダンジョンに慣れたら冒険者になってもいいといっているわ。一緒にいれば、いい経験になる」

アウミも保護対象だった。ただ三人組と一人。きっとソアラたちが一緒だったら保護されたのだろうか。
いまさら『たられば』をいってもすでに遅い。

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