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第九章
第455話
しおりを挟む「妖精たちが、死んだら同じ場所に生まれるっていうのは間違いよ」
女神があまり身体を借りていても疲れてしまうと思い、最後に聞きたいことを質問した。妖精たちのことだ。隣国での事件が気になっていることがあったのだ。
「隣国は?」
「あそこは王都周辺に結界が張られていたの。妖精たちを指定して、入ることができても、結界から出られないようにしたの。だけど穴はあって、運良く国の外で生まれ変わった妖精はいたわ」
「しかし、妖精たちの話の中で、殺されていなくなった、消滅した、という話を聞くよ」
「ええ。妖精たちは無限の生命をもってるわ。でも、心が疲弊して『消えたい』と強く願ったときに、妖精たちは一時的に眠るの。『妖精のたまご』と呼ばれるものよ。騰蛇、保護しているんじゃない?」
女神が騰蛇を見上げて確認する。すると妖精が驚きの声をあげた。
《 え⁉︎ 騰蛇が隣国で回収して持ってるって! 》
《 じゃあ、私の仲間もいる⁉︎ 》
「『妖精のたまご』は傷ついて癒されるために眠っているの」
《 それでもいい…… 会いたい。私を逃してくれたの。だから、お礼が言いたい 》
あの子は私たちと一緒に国境まで行って、最後まで仲間を探し続けていた地の妖精だ。必死に涙を我慢している妖精だったが、決壊してしまったのはアラクネがいくつかの卵をいれた、羽毛が敷かれた籐の籠を持って現れたからだ。
《 いた! みんないたぁ! 》
《 そっか。あの子、仲間がみんないなくてひとりぼっちだったんだ 》
卵に抱きついて、ひとつずつ撫でたりキスをして再会を喜んでいる妖精。誰もがその様子を黙って見守っていた。
「エミリア。農場を広げられる?」
「地上に『妖精のゆりかご』をつくるの?」
「心が落ち着いた妖精たちだけね」
『妖精のゆりかご』とは、妖精たちの巣みたいなものだ。ゆっくり休められる自然の多い場所である。
「いいですよ。隣に妖精たちの住まいを提供しましょう。妖精も仲間ですからね」
「そこに魅了の女神も一緒に住めばいいわ」
シーズルの言葉にアラクネが提案する。その言葉に女神は驚いたが、「妖精のたまごと妖精たちの見守りよ」と言われて恥ずかしそうに微笑んだ。
目を覚ましたフィムは、アゴールに連れられて火龍と挨拶中。魅了の女神に身体を貸していた間は寝ているため、話を知らないらしい。そんなフィムに火龍がご褒美として頭に乗せたり遊ばせている。
地上にはいま問題が起きている。
「って言ってたけど何が?」
「大したことではないわよ」
「そうね。ちょーっと某湿地帯のある国と、偉そうにしていたお隣の国がケンカを始めてね」
「あの二国、正式に約束を反故にしたことで仲違いしたよね」
「それがケンカの理由よ」
人はそれを戦争という。
「でも、なんでケンカを始めたの? 下剋上?」
「勝てないことがわかってるダイバが、無謀にもコルデに向かっていくようなもんさ」
「そして瞬殺?」
「うーん、今回はいつもとちょっと違うから」
「女神が関わってるから?」
そう聞いたら「「「違う違う」」」と声を揃えられた。
「コルスターナの国王が死んだ」
「あれ? まだ生きてたの? あ、違うか。聖魔士くずれは父親や兄姉たちを殺したんだっけ」
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「どこかって公開してなかったよね」
そう言ってメッシュに目を向ける。
「パルクスです」
パルクスは、アウミの中にいる女神を手に入れたから、大きくでたのだろう。
「ってことは、コルスターナの国王はパルクスの手の者に殺されて?」
「それがケンカの発端です」
……迷惑な連中だ。
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