私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第452話

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私が落ち込んでいる間、アゴールは元気を復活させていた。

「おい、エリーも復活しているぞ」
「あれは……エミリアさんの元気を吸い取ってるんだぜ」

コソコソと小声といえない声があちこちから聞こえる。私は、というと白虎が尻尾で顔をパタパタ叩いて慰めてくれたから元気が回復した。

「エリー、私が妊娠したのは事実よ」
「え‼︎ ほんと! ……ほん、と……なの?」

ミリィさんの言葉に目を丸くしたエリーさんは、確認のために周囲を見回す。しかし「妊娠したって証拠は!」という言葉が続いて誰もが顔をそらす。『鉄壁の防衛ディフェンス』は男性パーティだ。

「妊娠した証拠を男性が知れるわけないでしょ」
「エミリアちゃん!」
「自分で確認すれば~?」
「………………え? …………あっっ!!! 鑑定……え、ええ⁉︎ えええ!!!」
「ほい、確認終了」

エリーさん、鑑定スキルをすっかり忘れてるよ。

「エリーはしばらく記憶障害が残るわよ」
「やっぱり夢と現実を行ったり来たりしたから?」
「それもあるけど、魂が定着していないからね。最初は『引き剥がされていた』けど、そのうち自分の意思で身体に入ってたみたいね。あ、フィムは一切負担はないわ」

女神はアゴールにそう告げるが、アゴールの表情は暗い。

「……影響は女神様に、出るのですね?」
「それと同じことがエリーさんに降りかかっているから、でしょう?」

アゴールが頷く。女神は負担を自分が受けようとする。それは私の中にいたときからずっと。

「エリーさんが寝ていたのは、魂が衰弱していたから。眠って回復させていた」
《 だから弱ってて発見が遅れた 》
《 でも肉体から勝手に離れて出歩いていたのはエリー 》
《 疲れてぐーすか寝てたエリーが悪い 》

妖精たちが手加減をしないで責め続けるのはそれが理由。それに気付いたのか、周りがエリーさんに目を向ける。

「たしかに、ぐーすか寝ていなければ早く見つかってたかもしれんな」
「結局エリーは」
「「「冒険者ギルド再入学!!!」」」
「えっ、あっ……! うそ……」
『鉄壁の防衛ディフェンス』の皆さんにそう言われて、エリーさんは慌てる。うん、途中から通ってないもんね。
「ちょっ……ちょっとまって! みんなは?」
「「「卒業しました~!」」」

昨日、卒業したんだよ。


「それで、あのアウミの中に入っていた女神は?」
「エミリア、気付いているわね?」
「旧シメオン国が崇拝していた女神、ね?」
「ええ、ごめんなさい。あまりにも古い記憶で覚えていないの」

女神が謝る。そんなこと謝ることでは……

「ねえ、私の夢に干渉してきたのって」
「あの少女の中にいる女神の仕業よ」
「じゃあ、俺の夢は」
「ごめんなさい。それは私です」

私とダイバは顔を見合わせた。夢を見せる目的が違うからだ。そして今、もう一つの可能性が出てきた。

「私の夢に干渉することで、魅了の女神の失った記憶も取り戻そうとした?」
「ええ……。たしかに、その干渉が始まってから彼女の存在を思い出したわ。でも存在を思い出しただけ。姉妹神として誕生したことと、何かと突っかかってきたことね」
「うわ! 思い出したくねえ!」
「そんなこと思い出させてどうするんだ⁉︎」

皆さんのいうことと同じことを考えていた。そんなことを思い出させても、さらに嫌われるだけ……

「ねえ、確認するけど……私が暴れたときの相手って」
「彼女の方よ」
「じゃあ、謝らなくていいわね」
「ええ、いいわ」

フフフと笑いあう私たち。

「なんか怖いっスけど……何したんです?」
「えーっと。夢で閉じ込められて……。何とか逃げ出せたんだけど……そこにいたから。平手打ちして、拳骨ぐーで殴って、お腹を蹴った!!!」
「おおおー! えらいえらい」
「その程度ですっか⁉︎」
「もっと徹底的に叩きのめしても良かったんじゃない?」
「今度会ったら、袋叩きだな」

思っていた以上に皆さんの反応が過激でした。
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