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第九章
第451話
しおりを挟む「でも、なぜ? なぜ私がそこにいるって気付いたの?」
エリーさんのテンションがだいぶ落ち着いてきたみたいだ。封印されていた事実を聞いて興奮気味だったけど。だって、エリーさんがみんなの前で泣き出すなんて、興奮しているから以外に考えられないもん。『鉄壁の防衛』の皆さんは、笑ってツッコむことで流していたけど……最初は驚いていたんだよ。いい仲間だね、気付かないように気を使っててくれて。
でも今回はそれがマイナスに出たけど。
気遣いがエリーさんが入れ替わったことの発見を遅らせた。でもエリーさんが封印されていたものを持って、ここからでていくなどされずにすんだ。
「誰も近付かないから、だろ?」
「そうね、妖精たちはエミリアちゃんを近付けないでしょうし」
《 ぐーすか寝てても気付かれない! 》
「もう……いい加減にしてよ」
妖精の言葉に苦笑するだけで反応は変わった。封印されていたとはいえ影響があったのかもしれない。
「それで、エミリアのいっていた『夢のわたり』。実はね、眠っている人の意識って自分の夢の世界から、ほかの人の夢の世界へ移動することができるの。隣り合っている夢同士がくっつくことでひとつの夢になる」
《 それって、水滴同士がくっついて大きくなるような? 》
「ええ、そうよ」
女神は水の妖精の言葉に笑顔で答える。
「でもね、反発し合う夢もあるの。ほら、戦争をしている夢と、お花畑で花に囲まれている夢では全然違うでしょう?」
「戦火から逃げている人と花畑の人は?」
「その場合はくっつくわ。それでね、反発する夢の場合は触れると割れるの。『夢を見てて急に目が覚めた』っていう理由がそれね」
女神の言葉に「何にもないのに突然目が覚めるときってあるよな」などと声があがる。中には「起きたら寝相の悪いチビッ子たちが腹の上で寝てたこともあるな。アイツらのせいで目が覚めたと思ってたけど、それが原因か」という言葉も聞こえる。
「『夢のわたり』というのは、寝ている人の身体に渡る、つまり、今の私の状態。寝ているフィムの夢に私が渡り、フィムの身体を操る。エリーさんは自分を模した身体に入って自分を演じていただけ」
「それで身体に影響はでないの?」
アゴールがフィムを抱きしめる腕を震わせて尋ねる。その腕をフィムの身体で女神が「もちろんよ」と言いながら撫でる。
「身体を借りるには条件があるの」
「条件? それは一体……」
「身体の持ち主が使っていいと許可してくれた場合。今はフィムが許してくれたの。この子はすごいわ。私の存在を最初怖がってたことを謝罪して、『赤ちゃんを守ってくれてありがとう』って。それでお礼に身体を貸してあげるって言ってくれたの」
「じゃあ、前から私のお腹を何度もさすっていたのは……」
「そのうちの幾つかは私にも話しかけてくれていたのよ。『おはよう、今日もおひさまが笑ってるよ』って」
「それっ、今朝のフィムのあいさつ!」
アゴールの驚きの言葉で、女神の話が真実だと裏付けされた。
「エミリアちゃん。竜人の精神的な成長は早いんだよ、一年で人間の三歳の知識をもつ。といっても最初の半年は人間の赤ちゃんと同じだ。まあ、首が据わったりするのが早いけどな」
「エミリア、竜人の骨は太いの。だから早く安定しやすいのよ。そして言葉を理解して覚える。声に出せるのは一歳前後だけど、念話でお喋りしてるわよ。それがときどき声にもれて聞こえるの」
私が不思議に思っていたら、コルデさんが気付いて説明してくれた。それに女神が補足する。
「だから、フィムを見ていると『この子、会話を理解してるんじゃ?』って思ってたけど」
「ええ、そうよ。エミリア、白虎は何歳だと思う?」
「仕草は子供だけど……二十歳以上?」
「十一歳よ」
「えええ~! 私十一歳の子に抱っこされてるの~!」
「……驚くのはそこか?」
「巨人族の八歳の女の子に抱っこされてショックだったのに……」
「あ、ショックだったんだ……」
落ち込んでいたら、白虎が頭を撫でて慰めてくれた。
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