私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第449話

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「ルレインがなんの罪を犯したか、多大な迷惑をかけたかは分かりません。ですが、元は俺が原因です。罰は俺が受けます。だからルレインを責めないでください」

お願いします、と俯いたまま言葉を紡ぐエンリケは、自分の膝に残されたルレインだった土塊つちくれを愛しそうに撫で続ける。

《 エミリア、いい? 》

地の妖精が私の腕に触れて許可を取る。多分同じことを考えているだろう。頷くとスッとエンリケに近付いていく。エンリケに同調術をかけると、突然現れた妖精に目を丸くした。

《 エミリアが許可してくれたから 》

そう言って土塊に手をかざす。すると残っていた土塊が集まって高さ八センチほどの、コロンと丸まって眠る小さな女の子の置物になった。その置物に火の妖精が丸焼きにして形を固定する。ちょうど素焼きに似た色合いだ。

《 これでもう壊れたりしないよ 》
《 大切にしてね 》

妖精たちの言葉に、渡された女の子の人形を両手で受け取り「ルレインの子ども時代に似てる」と呟いて涙を流した。



「ありがとうございます」

エンリケは人形を胸に抱きしめて妖精たちにお礼を告げる。そして私たちに「すみませんでした」と頭を下げた。

「ルレインはお前を連れて出て行こうとしたんだ。そうすれば自分も罪人になるというのに、だ。お前を魔法で呼び寄せなくて、夢の中でお前が殺されたと聞かされて信じた。その結果が……これだ」

シーズルの言葉で、エンリケの腕の中の人形に全員の目が集中した。

「ルレインは結婚するんだと言っていた。そんな人がいるのに、なんで聖魔士くずれに手を出そうとした? 檻に防犯装置がついていること知ってたよね」

エンリケは俯き、「都市まちを守るためだった」と呟いた。

「あんなのがいたら、まともじゃない奴が集まってくる。それなら大人しいうちに殺してしまえば」
聖魔士くずれアレはコルスターナの廃王子だった。そのまま殺していたら大問題だったぞ」

ダイバの言葉に驚くエンリケ。そこまで考えていなかったのだろう。

「ハハハ……。だからいつもルレインに叱られるんだ、『ちゃんと周りの関係を確認してから動け』って。……今度から、誰が俺を止めるんだよ」
「自分で考えろ。それがお前にできるルレインへの償いだ。そして、ルレインの幻聴が止めるときは絶対手を出すな」
「ああ、あのときもルレインは止めたんだ。……ちゃんと聞いていれば、お前を死なせることはなかったのにな」
「しっかり、いまの罪を償いな。そのあとに、ルレインに謝罪しながら生きようとあとを追おうと、それはお前の自由だ」
「ああ、まずは反省して生きる。……世話になった」

そう言ったエンリケは、アラクネに南部の農村へと送られた。



「さあて。エリーは今までどこで何をしていたか、洗いざらい吐いてもらおうか」

ミリィさんが肩を回してパキポキ、指をバキボキ。戦闘態勢に入っている。

「ミリィたいちょー。無理しないでくださいよー」
「ちょーっと問い詰めたいことがあるだけよ」
「エミリアさん、止めてください!」
「え~、私も聞きたいことがあ~る~の~」
「そうですね。私もちょーっと確認したいことがあります」
「フフフ。まあかせて♪」

ピピンの言葉にリリンが微笑むと一瞬でエリーさんを触手でグルグル巻きに捕まえた。

「ちょ、ちょおっっとおおおっっっ!!! 離してえ!」
「「「ダ~メ」」」

リリンと私とミリィさんの声が重なった。それに青ざめるエリーさん。

「エミリアちゃん! あなたなら二人を止められるでしょ!」
「や~だ」
「そうですね。ちゃんと話していただかないと」
「ああ、ピピンの言うとおり『同じことが起きないため』に、しっかりと話を聞かなくてはいけない。な、シーズル」
「たしかに、次は俺が都長だからしっかり聞いて対策しなくては」

私たちの助けがもらえないと分かり、青ざめるエリーさん。周囲に目を向けるが、誰も助けようとはしていない。

「たまには優位にたたなくては」
「う、裏切り者おおおおお!!!」

エリーさんの叫びはこの地下空間で木霊した。
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