私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第442話

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「その中に子供……女の子はいた?」
〈いや、子供は一人もおらぬ〉
「ってことは、パルクスに逃げ込んだか?」
「……また繋がったか」
「エミリアちゃん?」

私の呟きはミリィさんの耳に届いたようだ。そして私に視線が集中する。

「もう一人の聖魔師テイマー、ルブランだけど……家族を人質に取られて国の繁栄のために働かされてきた。その国がパルクス。そして妖精たちに導かれて逃げた先、が……」
「シメオン国、ということか?」

ダイバの言葉にコクコクと頷く。ミリィさんの話では、シメオン国は精霊や妖精の加護が強い国だそうだ。妖精たちを通じて聞いた話では、ルブランは家族と共に庇護されているらしい。それはムルコルスタ大陸にエリーさんたちにくっついていった妖精たちが集めてきてくれた情報だ。
シメオン国とパルクス国は両極端に位置する。妖精たちの味方か否か。妖精の友か使役か。
シメオン国は妖精の友である聖魔師ルブランを家族ごと庇護すると共に、パルクス国を敵視した。パルクス国がを求めたからだ。

「そしてパルクスにとって敵であるシメオン国と、シメオン国を敵視してるか憎んでる旧国の流民るみんたち。利害が一致して手を組んだ可能性が高い」

話が国も大陸も超えて大きくなってしまった。関係者で話し合う必要がある。

「で、ダイバ。ヘインジルは?」
「ああ、表の仕事をしている」
「今度は俺が都長とちょうだから、俺が聞いていた方がいいらしい」
「あ、今度はシーズルの番?」
「ああ、来年はノーマンの予定だったが、アイツ……何もかも辞めたからな」

たった今、ノーマンたちの死を知らされたばかりだ。

「シーズル……ノーマンたちの死は公表する?」
「いや、正式に退職してでていったんだ。罪を犯して逃げたわけではない」

それでもいつかは公表するらしい。

「今は『知らぬ存ぜぬ』で行った方がいいです」
「あー、お前はなんでここにいる」

いつのまにかきていたのはメッシュ。チラリとアラクネを見ると「第三者の記録者は必要でしょう?」と笑っていた。


「そうですか。ノーマンたちパルクス組は全滅ですか」
「パルクス組?」
「ほかにも向かった組がいたのか?」
「ええ、コルスターナ組です。外周部の屋台組ですが……コルスターナはすでに瓦解していて国としては機能していませんからね。そちらも無事とは限りません」
〈ん? ここからでていった者たちはコルスターナに向かってはおらぬぞ〉

メッシュの報告に火龍が訂正をいれる。メッシュの方は情報部からの情報だ。

「火龍殿、情報部の報告ではコルスターナ国に向かい、今は……いえ、火龍殿の言うことを信じましょう」
「どうした? メッシュ」

メッシュの様子にシーズルが声をかける。メッシュがすごい速さでステータスを操作して情報を精査しているのだ。

「実は今のはコルスターナに聖魔士ギルドの崩壊を調べにいった者からの報告だったのですが……今まで報告のなかった者たちがなぜ『アウミたち一行の情報』を送ってきたのか。それもアウミやノーマンたちが共に行動をとっている可能性はあっても、外周部の行商人が家族と共に出ていったことは私でもです」

メッシュが知らないことを、ほかの国にいる調査部員がどうして知っているのか。

「敵の手に落ちたか」
「そうですね。あまりにもタイミングが良すぎです」
「そうなると、コルスターナに向かったように見せかけて、アウミたち生存者はパルクスにいる」

それも、王族の庇護に。それは女神の存在が関係しているのか、旧シメオン国の流民るみんであるアウミの存在か。どちらに重きを置かれているのか。それとも両方に価値があるのか。
少なくともルブランの代わりに手に入れた二人を、パルクスはまともな扱いをしないだろう。
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