私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第441話

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《 エミリアぁ、起きてー 》
「ぐー」
「エミリアちゃん、起きて」
「ぐー」
「エミリア~、ウルールいるだろ」
「ぐー」
「寝ながらするな~」
「ぐー、グー、ぐー」
「グークースも寄越せ? ちゃんと起きたら」
「起きた。ちょうだい」
「えーい! 手を出すな」
「あれでよくわかったな」
「いい加減、慣れた」
「ちょうだい」
「エミリア、ご飯食べてからね」

ここでふと気付いて周囲を見回してから口を開く。

「ここはどこ?」

そう、白虎のひざ抱っこ状態で寝てた私は、何故か騰蛇たちが棲む地下にいた。ただ、ここには私や白虎たちだけでなく、ダイバとアゴール、『鉄壁の防衛ディフェンス』のみなさんとエリーさん、ミリィさんにルーバー。
そして……バラクルの竜人全員が揃っていました。


「えっと……アラクネ?」
〈いや、今日はワシじゃ〉
「あ、火龍」
「私と再戦しに……」
〈じゃないから大人しくしろ》

火龍の言葉にアゴールがピタリと動きを止めた。もっと騒ぐのかと思ったが、アゴールは深呼吸をするとステータスを操作してイスを取り出して座る。アゴールにピタリとフィムがくっついていて、大きな火龍を口を開けて見上げていた。フィムの存在が、アゴールの『火龍に再戦して今度こそ斃す』という厄介な症状を緩和させたようだ。男勝りだろうと、やはり母親なのだ。

〈ほう、そこな幼な子がダイバとアゴールの子か〉

火龍の言葉にブンブンと頭を上下に振るフィム。その目は興奮からかキラキラと輝いている。

《 可愛いでしょ。フィムっていうんだよ 》
〈そうか、そうか。してそこに、おお、そっちにも新しい生命が宿っておる〉

アゴールを見ていた火龍がふと少し離れたところに座るミリィさんにも目を向けて嬉しそうに細める。

「火龍様、はじめてお目にかかります。ミレーヌと申します」
〈おうおう、其の方がエミリアのいうミリィか。妊婦はそうそう立たなくて良い。ということはそっちが旦那じゃな〉
「ルーバーと申します。お目にかかれて恐悦至極に存じます」
〈ほう、ダイバよりは礼儀があるな〉
「えー、火龍ってダイバ見た瞬間にケンカ売って、余波が私に向かったから怒ったアゴールに瞬殺されたクセにぃ~」
〈こら、エミリア。ここで暴露するでない〉

火龍の苦笑にエリーさんたちの「瞬殺……」という呟きが聞こえた。

「倒せてないわ。生きているもの」
〈殺そうとするでない〉
「でも倒したいわ」
《 ん、もう。ここに呼んだ理由を先に言いなさい 》
ぺっちん
《 いま、地上は大変なのよ 》
ぺっちん
「なにがあったの?」

妖精たちが火龍をペチペチと叩く。……何があったというのだろうか?

〈ああ、すまぬ。実は、エミリアたちが気にしておった『騰蛇の庇護から抜けた者たち』のことじゃ》
「それってノーマンたち?」
〈ああ、そうじゃ〉

火龍はちょっと言いづらそうにしていたが、意を決したように真面目な目線を私たちに向けて言葉を続けた。

〈二つ向こうのパルクスで全員死んでおる。凍死じゃ〉

パルクス国……もう一人の聖魔師テイマールブランが、家族を人質にされて逃げられなかった国。そして……

「コルスターナを影で操っていた国……」

ルブランを逃したことで聖魔士を管理できず、結果的にコルスターナの壊滅のキッカケを作った国。

「各国が、聖魔師テイマーを手に入れられれば、大陸を我が物にできると勘違いした一番の元凶だ」

ダイバの呟きにはいかりが含まれていた。
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