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第九章
第434話
しおりを挟むアゴールのある一食分リストを確認していたミリィさんが、何かに気付いたように顔をあげた。
「ねえ、ダイバ。アゴールの普段の食事はどうなの?」
「ん? そうだな、こんなに食うことはない」
「じゃあ……『フルーツガーリックがアゴールの食欲に影響を及ぼしている』ってこと?」
「それは腹ン中の女神にも、何か影響が起きているということか?」
「ん~? どうだろ。この前は結局足りなくてお袋たちにも作らせていたが」
「それらは食べた?」
「ほどほどかな。途中で睡魔に襲われて寝ちまったから」
フルーツガーリックに麻薬成分はなく、アゴール自身に影響はない。
「アゴールにはなくても胎児には?」
「それも問題はない」
「……じゃあ、女神に影響が出ているの?」
「それがなあ……封印しているだろ? だから女神の状態はわからないんだよ」
ただ気になることがある。
「アゴール、フルーツガーリックを含んだ料理を食べた後は眠ってるんだ。まるで冬眠とかみたいに」
「え? じゃあ、いまは?」
「ああ、寝てる。まるで体力を温存しているように」
そう、寝てる。その状態が……私がこの大陸に来た直後に似ていると心配している。当時は私の中に女神がいた。そして、その女神は今アゴールの中にいて、あのときのように何日も眠っている。
「エミリア、大丈夫だ。エミリアの中にいた女神がエミリアを回復させるために眠らせ続けていたということは、今のアゴールも何か理由があって女神が眠らせているだけだ」
「ダイバ、だったら女神は」
「多分、ほかの神たちと違う。『魅了の女神の伝説』が伝説どおりだとするなら、争いを好まない女神のはずだ。それと、エミリアの夢の中に姿を見せた女神の姿を確認した。例の『魅了の女神信仰』に似ているが、同一というより姉妹神というところか。そうなると、姉妹神に見つかりそうになった、もしくはエミリアに危険が迫ったから、エミリアを守るためにでた可能性がある」
「そうなるとね、今まで絡んできた人たちが去ったのもわかるんだ。魅了の女神が私からいなくなったから。夢に干渉してきた女神はね、私より自分たちの目的のために記憶を取り戻させようとしたの。それが倒れた理由。それって、脳に悪影響が出るんだって火龍が教えてくれた。だから私を守ろうとして眠らせてたの」
「そうなると、エミリアの農園に気配が残っていた理由は、エミリアからでてもエミリアのそばにいたい、見守りたいと願ったからだろう。そして今、アゴールが眠っているのもアゴールを守るため。アゴールに何か起きているのか起きるのか」
フィムの様子が心配だったから女神を封印したけど、それは女神を守ることになっている。だったら……
「フィムに神が接触したってこと?」
ミリィさんの言葉に私とダイバは首を左右に振る。
「「アウミだ」」
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