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第九章
第427話
しおりを挟む火龍から齎された竜人に関する情報を、ダイバはわかりやすく説明した。その情報を前提に読んだ方がいい、と言ったのだ。
「それでエミリアちゃんは、この大陸にいるかもしれない『もう一つの竜人』を知るために、じーさんを探してるってことか」
「いや、違う。じーさんから何か聞いてないか? 相手のことを」
「……いや。じーさん……親父は当時こう言ったんだ『隣の国から竜の血を求めて竜人狩りがやってくる』と。戦争を始めたら竜人は脅威になりうる。だから先に……ん? エミリアちゃん、どうした? そんなにキョトンとして」
コルデさんの話に一部引っかかった。それに気付いたのだろう、コルデさんが説明を中断した。
「竜人は脅威なの?」
「まあ、龍になれると思われているからな」
その一言に、コルデさんの隣に座ってるアルマンさんが「ああ、それか」と、何かに気が付いたように言葉をもらした。
「なんだ? アルマン」
「たぶん、エミリアちゃんの疑問はそこだ」
「何よ、アルマン。もったいぶっちゃって」
「エリー、たぶん私も同じ点で引っかかってるわ」
「え? ミリィまで⁉︎」
ミリィさんは、私を探して旅をしている間にさまざまな経験をして見識を持ったことで、アルマンさん同様に知識と注意力が高くなりました。それでも優しさは変わりません。愛情深い点も。
「ねえ、エミリアちゃん。コルデに聞きたいのは、竜人狩りは竜人以外に可能なのか、よね。そして、その竜人狩りの目的が殺すことではない可能性も考えたのね」
ミリィさんの言葉にコクコクと頷いて「ダイバは龍の血が目的だって聞いたって」というと、オルガさんが「俺もそう聞いた!」と声を上げる。
「親父からは、竜人の血が目的と聞いている」
「火龍は『手引きしたものがいる』と教えてくれたよ。あとね、セウルたちにお兄ちゃんがいる。……両性具有で名はボタジェシカ」
「それが、シューメリに先祖返りの話を聞いたときに一緒に聞いていた理由か」
コクコクと頷くと「まだ隠してることがあるな?」とアルマンさんに指摘された。
「フレイズ、シューメリさんの旦那さんの……弟? いまは女性だっていうから妹?」
「弟でも構わん」
「うん、じゃあその弟っていうのが……」
まだ仮定でしかないけど言ってもいいのだろうか。ダイバみたいに熟考してもらえるだろうか。……表面に現れた問題だけを受け取って、奥底に隠された問題に気付けるだろうか。
「エミリアちゃん?」
実際に、エリーさんたちは王都治療院の実態に気付けなかった。私はエリーさんたちを信用していないのだろうか。私の性格なら、水の洞窟であんなことがあっても王都治療院を信じようとしたシェリアさんを、信用できないと思っていただろう。
今ほど、当時の記憶を取り戻したいと思った。当時の私が、何を思っていたのか。目の前のエリーさんを、ほかの人たちを信用していたのか。
ただ、ここで再会したミリィさんはもちろん、アルマンさんとコルデさんは年の功で信用できる。何でも鵜呑みしないで、カケラをみて考えることができるのを何度もみてきたから。
……私は気付いてしまった。きっと、エリーさんとオボロさんを。『鉄壁の防衛』の面子を……当時の私は信用していなかった。
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