私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第421話

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「ですが、エミリアさん。今でも罰として去勢は行われているのでしょう? その割にその手の犯罪が減らないような……」
「ああ、それなら数ヶ月前に理由が判明した」

ダイバの言葉に全員の視線がダイバに集中した。

「元々は『エミリアに手を出した連中の末路』が知られていない理由がわからなかったんだ。そうしたら、情報収集で王都に出てる情報部の連中が、『エミリアに手をだした貴族たちの末路の情報が正式に発表されていない』といってきた」

ある貴族が罪を犯して罰を受けた。今は水路工事で二十年の労働の罰を受けている。王都での認識はその程度だ。

「それで正式に調査を頼んだ。その結果、大陸法で罰を受けている貴族や商人たちは、その違法行為を公開されずにいた。それで情報部は大陸法違反による罰の特集記事を発表した。貴族や商人たちの実名を公表して、いつ罪を犯して罰を受けたのか。さらに商人・職人・冒険者は『同職に対して迷惑をかけるべからず』というギルドの規約を破ったことで、罰が上乗せされたこと。そして実名と罪名、労働や罰金に関するリストが公表された」
「それで、二年前にギルドはルールを変更した。たとえば私に迷惑をかけたら、迷惑をかけた本人が私に慰謝料を支払う。そして私の所属するギルドにも同額の慰謝料を支払う。迷惑をかけた者が所属するギルドは、私と私が所属するギルドに慰謝料を支払う。その代わり、私たちに慰謝料を支払ったギルドは、その慰謝料を迷惑をかけた本人に全額請求できる」
「それは私たちの国でも変更になったわ。何でも罰則が甘いために罪を重ねるメンバーがいる。罰則を重くすることで彼らを抑制したい、との理由だった」
「その通りだ。自分たちのギルドに所属するメンバーを信用するならその提案に乗れるだろう? 運が良ければ違反者とギルドから慰謝料がもらえる。ただし、支払う側になる危険性もある」
「ああ、届いたのはそんな内容だった」
「いまの都長とちょうが商業ギルドのマスターだ。内容も彼が草案をつくって全国のギルドに送った」

それは今、各国のギルドで容認されている。ポンタくんのギルドが慰謝料それで私の借金を完済しただけでなく、大変潤っているという前例がある。

「欲深いよねえ」
「前例があるからな」
「支払う側に回る、とは考えないんだね」
「慰謝料を支払っても、当事者に請求できるって考えてるからだろ?」
「穴があるのにね」
「欲で目が眩んでいるからな」
「え⁉︎ どういうこと?」

私とダイバの言葉にエリーさんが驚きの声をあげる。

「同時に複数人が違反したら、慰謝料が膨大になるよ。実際に冒険者ギルドで、十三人が同時に規則違反して支払いを渋ったんだ。渋ってたら、十三人分の延滞金なるものがスキップしてギルドに押し寄せて住み着いたんだ。気がついたら、延滞金たちは丸々と肥えちゃって……本来支払う額の五倍! それが十三人分!」
「それも延滞金はギルドの負債、つまり当事者十三人に請求はできなかった。エミリアと所属ギルドに支払いを渋った。エミリアはトラブルをさけて、すべて他国ポンタのギルド所属に変更したから、泣き落としはできずに借金はふくらんだ」

ダイバの説明にエリーさんは目を丸くした。他国にいる私の窓口はポンタくんが担ってくれている。慰謝料の督促もすべてポンタくんがおこなう。その代わり、手数料を一割受け取っているはず。
ポンタくんから冒険者ギルドエリーさんに、そのときのお金がはいっていたのだろう。

「ポンタが『エミリアちゃん関連の規約違反で慰謝料が届いている』と寄越したあの金がなのね」
「ケタ外れですよね」
「ええ、十三人分で延滞金付き。……それでも異常な金額だったわ」
「さっさと支払っていれば、少なくてよかったのにね」

そうすれば、身を滅ぼすことはなかっただろう。
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