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第九章
第416話
しおりを挟む外を歩くと、リリンと白虎に言い寄ろうとする鼻の下が伸びた男たちが前に現れる。そして通り過ぎたあとには、死屍累々が……
「一応生きてる」
「刈りとったのは意識だけ?」
「…………」
「何を狩った?」
「…………ナニを刈った」
リリンがスパッと生殖機能を退治した、らしい。
「治療院に運ばれたけどな。見事なことに……治療不可だったらしい」
「おーほほほほほほ」
ダイバの説明にリリンはわざとらしい笑い声をあげた。そういえば、ピピンがリリンを止めていない。
「ちょっと、ピピン。これってピピンのアイデアってことないよね?」
「エミリア、どうしたのです?」
「どうしたもこうしたもないわよ。リリンの暴走にみえるけど、実際はそうじゃないわね」
《 あ、バレた 》
《 やっぱり説明したほうが良かったんじゃない? 》
どうやら妖精たちも加担してたらしい。ダイバが呆れたように、大きく息を吐いた。
「つまり、あれはアラクネの金糸に似たものをだして……」
「キュキュキューって縛りつけたってこと」
リリンはそう言うと「フフフ」と嬉しそうに笑う。そんなリリンの頭をペンッと叩いたのはピピンだ。
「正確にはリリンは種を植えました。その種が性的欲求を感じとれば根を出して締め付け、反省すれば根を引っ込めます」
ピピンの説明にダイバが苦笑する。それは男性ならではの苦悩からだろうか。
『禍根を断つ』と言う言葉がある。意味は『災いの元凶をたつ』だが、禍とは伝説では猪の姿をして鉄を食べていたらしい。禍母とよばれる禍を生み出す生物が市場で売られていると知り、愚かな王が「見てみたい」と言った。食事は針を一升。そんな不気味なもののために針は奪われ、鉄も奪われた国民は逃げだした。家臣たちが倒そうとしたが体毛は針のように硬く、突いても斬っても倒せない。
「それで火の中に放り込んだら、火ダルマ状態で王都を走り回ってすべてを焼き尽くして滅んだ」
「そんな危険なモンを普通の者が扱えるのか?」
「売ってたのは神だと言われている。災厄を知らない豊かな国の王が、『みたこともないもの』をほしがった。だいたいさあ『災厄がないからみてみたい』って愚かなんだよ」
それで何故、禍根と植物の種が繋がるのか?
「この世界では禍根というのは『植物の蔓』を意味する。廃墟で蔓が伸びている場所は神の呪いが働いて滅んだ証拠だ」
「じゃあ、治療院が手を出さないのは」
「神の意思。一応ピピンたちには目覚めに協力した騰蛇の神属性を帯びているということで、神の罰だと勘違いしている」
「わざわざ間違いを指摘する必要はないですね」
「確認しない方が悪い」
「聞かれていないことを教えるのは、相手を侮辱する行為ですね」
《 鑑定すればわかるのに 》
《 放っておけばいいわ。自分で知ろうとしないんだから 》
「ということで、連中はこのまま放置でいいか?」
ダイバの言葉に、誰も反対しなかった。
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