私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第412話

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「エミリア、起きてください」
「まだ眠い……良い子は遅寝・遅起きぃ」
《 ほら、起きて 》
《 あー、もう。そんなこと言ってたら怒られるよ 》
「あなたたちが、です。なぜ規則正しい生活を送らせなかったのですか」
パッシーン
《 エ、エミリア! 起きてー 》
「……良い子は二度寝」
パッシーン

…………ん?

「さっきからぁ……リリンの触手の音がするぅぅぅ?」
《 そうだって! 》
「エミリア、おはようございます」
「エミリアを起こすのに何時間かかってるのですか」

隣から変わらない優しい女性の声と……落ち着いた男の人の、声?
心当たりのない男性の声に、私はガバリと飛び起きた。

「…………何が、起きてるの」

ここは私の部屋、私の寝室。私はエミリア。うん、それはわかるし間違っていない。
でもこの部屋には、

① ベッドで上半身を起こした私。
② ベッドに腰掛けて、私の背を支える白銀の髪の女性(初めてみたパート1)
③ とんで逃げ回る妖精たち四人。
④ 両手に緑色の鞭を持って妖精たちを追い回す、花緑青色エメラルドグリーンの髪を肩で切り揃えた女性(初めてみたパート2)
⑤ 出入り口で腕を組んであきれた表情をしている、肩まで伸びた瑠璃色ラピス・ラズリの髪のイケメン執事風(初めてみたパート3)

ボーとしている私に、イケメンの横を通り抜けた水の妖精とくらやみの妖精が寄ってくる。

《 ん、もう! エミリア、なんで着替えてないのー 》
《 ごはん冷めちゃうよー 》
「…………説明」

そう言った私に二人はすぐにピンときたようだ。

《 みんな! 何でエミリアに説明してないの! 》
《 エミリアが混乱してるじゃない! 》

二人の声に、鬼ごっこ真っ最中の妖精たちがピタリと動きを止める。それにはイケメン執事(風)もキョトンとしたあと「まだ、何も?」と私の隣の女性に確認する。それに苦笑しながら頷かれたイケメンは、ベッドに近付くと片膝をついた。

「エミリア、私たちがわかりますか?」
「…………ピピン、だよね?」

恐る恐る確認すると、「はい、そうです」と答えてくれた。その私を見る目はいつもの優しい目だ。
隣で私の背を支える女性を見上げる。私より少し上のお姉さんの、いたずらっ子の目を私は知っている。

「白虎?」

私がそう確認すると、「はい!」と嬉しそうに抱きついてきた。
伸ばした足の先、ベッドを置いても倍以上の余裕がある、ラグが置かれた広い空間で鞭に妖精たちを二人ずつ巻き取って微笑む女性。

「リリン……変わらず、鞭を出せるんだね」

そう笑いかけると「アラクネが糸を出すのと一緒」と答えながら、ブンブンと妖精たちを振り回した。

「みんな、おかえりぃ」

色々言いたいいことも聞きたいことがあったのに、それしか言えなかった。
あとは安心した私は白虎に抱きしめられて大泣きし、ピピンとリリンからも抱きしめられたから。
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