私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第409話

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《 ただいま。アゴールは寝かせてきたよ 》

ピピンが眠らせたアゴールを、白虎が運んで行った。それに水の妖精と地の妖精、くらやみの妖精がついていった。アゴールを乾かせて、眠りを深くするハーブを嗅がせてきた。
ちなみにリリンは私と一緒にお留守番組。行動が別れるときは、リリンとピピンはどちらかが私の元に残る。

「おかえり。今後の予定なんだけど、数日休んでからダンジョンに行こうと思うんだけど、どう?」
《 さんせーい!!! 》
《 ……はんたーい 》
《 同じく 》
「……あれ?」

みんなが賛成すると思ったら、珍しく反対派がでた。賛成派も反対した子たちを驚いた表情で見ている。

《 なんで反対? 》
《 なんか心配なことでもあった? 》

反対したのはアゴールをバラクルまで連れていった、水の妖精と地の妖精、くらやみの妖精だった。

《 なにが、どうっていえない 》
《 ただ『今はやめた方がいい』って直感で思ったの 》
「その原因は?」

私の質問に三人は首を左右に振る。その表情は困惑が強く、くらやみの妖精は涙目だ。

「ピピン? 白虎?」

一緒に行った二人なら何かわかるかと思って声をかけたら、揃って目を背けられた。

「何を隠してるの?」
《 どうし…………えええええええええええ!!! 》
《 ほんと⁉︎ 》
《 ほんとにホント⁉︎ 》
「えーい! 通訳、プリーズ! フォロー ミー!」

妖精たちに忘れられて除け者状態の私が騒ぐ。白虎が駆け寄ってそのまま押し倒すと、私に覆い被さると顔をなめ回してきた。

「えーん、白虎ぉ。みんなが通訳してくれなぁい」

白虎のもふもふに癒されながら不満を訴える。白虎の背に乗っていたピピンが私の横に飛びおりて頬ずりをしてきた。私の肩に乗っていたリリンは、反対側で頬にくっついてプルプルと左右に揺れている。

《 エミリア。大事な話があるの 》
「やだ、聞きたくない」
《 ……あ、除け者にされて拗ねてる 》

火の妖精ひーちゃんのいうとおり拗ねてる。それがわかっているから、私は白虎のもふもふに顔をうずめる。
……それと、『何を言われるのかがわからなくて怖い』という感情が湧き上がっている。
『独りになる』ことが怖い。それは今までなかったこと。だから気付いてしまった。私は魅了の女神がいたから、今まで孤独を感じることはなかった、ということを。
白虎に震えながらしがみつく私に何か感じたのだろう。リリンがラベンダーの香りを私に送ってきた。妖精たちは何も言わない。私の中に蟠る恐怖を感じているからだろう。
静かな室内で、リリンが身体を揺らしたときに鳴らす『リーン』という涼やかな音だけが、繰り返し響いていた。
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