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第九章
第408話
しおりを挟むダイバは私にもう家にはいって休めと言った。遠くまで出掛けた上に、ダイバとの同調術など初めて尽くしなことをしたため疲れているだろうと心配しているのだ。
「アゴールたちの方は大丈夫だ。あと、地の妖精たちが作り出した『結界最大強化』がある。ダンジョン都市を守るために力を貸してくれるんだろ?」
《 うん、まかせて 》
地の妖精たちが作り出した結界は、時間がくれば自然に消滅する。……地面に吸収されるのだ。これは水の妖精たちが作り出した結界でも同様だった。
〈栄養として地面に吸収されておるのじゃ〉
火龍の説明にただただ驚く私たち。しかし、雑草が生え出したという報告も情報部から写真付きで上がっている。
「そういえば、魔物の氾濫を防いでいたけど。地の妖精が作った結界だよ? 違う属性なら結界を越えてきそうだけど」
〈それは簡単じゃ。地面に接している魔物は、まず弾かれる。さらに、妖精たちが作り出す結界はドーム型じゃ。ホレ、我が作った結界もそうじゃろう?〉
「でも、普段は箱型の結界だよ?」
〈それは一体だけだからじゃよ。地の、みんなで作ったときはどう作ったんじゃ?〉
《 みんなで手を繋いで円になったよ 》
〈ホレ。円になればその状態で結界が作られてしまう〉
「それはイメージが結界の型を決めるということか?」
〈その通りじゃ〉
ダイバの質問に同意して頷く火龍。しかし急に真面目な表情になると
〈ダイバよ。エミリアの秘密を知っておるか?〉
と聞いてきた。
「聖女のことか?」
〈フム、知っておったか。それはみんな知っておることか?〉
「いや、ダンジョン都市で知っているのはいない。エリーたちと、ダンジョン都市に住んでいるミリィはエミリアが召喚された国の出身だ。ミリィとの関係でルーバーも知っているが……その程度だ。アゴールにも話していない」
ダイバの返事に〈フムフム〉と頷く火龍。
〈ではこのことは無闇に口外するでないぞ〉
そう言って妖精たちの結界が魔物を弾く理由を教えてくれた。
「ちぃちゃんたちは、聖女である私の魔力を使っていることで『聖属性』が加わってて、妖精たちは不思議な頭で感染して、ダンジョン都市に住む妖精たちが全員、聖属性になった。……て、ダイバ、理解できた?」
「ああ、『聖魔師の効果だ』ですませばいいな」
《 それでせいかーい! 》
〈そうじゃな。この世界に聖魔師は二人だけじゃ。一人は家族で違う大陸に渡った。調べようにも二人だけでは正しいか否かはわからぬ〉
そんな理由から、のちにダイバが情報部に妖精たちのことを説明してくれるそうだ。
「エミリアに任せたら面白おかしく補足してしまうからな」
「えー! 私が楽しければそれで良いじゃん」
「そ・れ・が・も・ん・だ・い・な・ん・だ」
火龍は大笑いして転がり、大地を広く平らにした。よし、次回は運動会をしよう。
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