私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第394話

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「エミリア。アゴールは男勝りなだけで正真正銘の女だ」
「フィムも産んだもんね。……お胸ぺったんこだけど」
「ちょっっっ! エミリアさん!」
「あるぞ……ちっこいけど」
「ダイバ!!! あんたまで……何を言ってるかわかってるんでしょうね!」
夫婦喧嘩なかよししてるー」
「原因はエミリアさんでしょ!」

そう言って、アゴールが背後から強く抱きしめてくる。怒ってるけど怖くないのは、アゴールの今は照れが入っているからだ。……本気のアゴールはめちゃくちゃ怖い。火を吹くドラゴンを一撃の蹴りで倒してしまうくらいに。

「だけどー」
「なんですか」
「ダイバはアゴールをお嫁さんに選んだし~。フィムや赤ちゃんもできたし~。お胸ちっこくても男勝りでも、ダイバはアゴールのことが大好きだよ~」

顔だけ振り向いてアゴールの顔を見ながらいうと、アゴールは一瞬で顔を赤らめた。

「あ、え⁉︎ ……ちょっと、あ、あの、エミリアさん」

アゴールは直接的なことを言わないと伝わらない。ただ、ダイバはまで直接的にいってしまうため、アゴールを怒らせてしまうのだ。

「アゴールは? ダイバのこと好きー?」

顔を真っ赤にしているアゴールは、ダイバにそんな恥ずかしいことを数回しかいったことはない。

「俺はアゴールのこと好きだぞ」
「あっ、えっ、えっと…………エミリアさんっっっ」
「ぐぇっっっ」

アゴールが恥ずかしがって、私に強く抱きつく。苦しい! アゴールの力は普通の女性の強さじゃないんだってば~~~!!!

「こらこら、アゴール。エミリアちゃんの首がしまってる」
「アゴール、エミリアから手を離せ!」
「も、元はといえばダイバが余計なことをいうからぁぁぁぁ!」
「くびぃぃぃぃ」
「アゴール! エミリアをさらに締め付けるな‼︎」

このまま落とされると思った瞬間に、バッコーンという音と共にアゴールの締め付けがゆるんだ。

《 いい加減にしないとぶっ飛ばすよ!!! 》

驚いて振り向くと、くらやみの妖精が体長の何倍も大きな片手中華鍋フライパンを両手で持って怒っていた。重力を操れるから重さを気にしていないようだ。

クラちゃん……。すでにフライパンをぶっ飛ばしてる」
《 あ、ああああ! 》
「エミリア、『問題ない。アゴールの自業自得だ』と言ってくれ」
「だって」
《 ごめんなさい 》
「だって」
「……エミリア。同調術を使っていないんだから、それだけで済ますな。だいたい何を言っているかはわかるが。今は妊婦だからほどほどにしとけ、ってそこで聞いてるんだから通訳しなくていいぞ」
「だって」
《 エミリア、いいって言われたのに 》
「だから通訳はしてない」
《 うん、最初っからしてないね 》

そういった暗の妖精は泣き笑いになっていた。
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