私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第387話

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ダイバは目を丸くしてから私と同じく深呼吸をしてから真面目な表情でまっすぐ私を見た。

「エミリア、俺たち竜人の一部には特異をもった者が生まれる。俺はこの目だ。この目をとおしてエミリアの過去のカケラをいくつか見た。こことは違う世界にいたことも、この世界で生きてきたことも。それはエミリアにしてみれば『知られたくなかったこと』かもしれない。……悪かった、すまん」

そう言ってダイバはローテーブルに両手をついて頭を下げた。

「いいよ、ダイバはここを守ろうとしただけだよね」
「ああ、最初は」

そう言いながら顔をあげるダイバ。ダイバは自分の持てる力を悪いことには使わない。それを信じられるから私は気にしていない。

「じゃあ、今は?」
「俺たちの妹になってから夢も見なくなったから……あ?」
「え? ……夢でも見てたってこと?」

二人で顔を見合わせて、ある言葉が同時に口から漏れた。

「「魅了の女神!」」
「私の夢を操っていたけど、ダイバの夢まで操っていたということ?」
「俺の夢にはエミリアの過去が何度も……。俺が目を使ってみられる過去は多くない。だからエミリアのことは、召喚前のことも召喚後のことも、その夢でほとんど知った」
「……なんのため?」

そう、理由がわからない。

「なんで日本のことまでダイバにみせたの? なんで……?」

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……

「エミリア。大丈夫だから落ち着け」

ダイバの声が頭の上から聞こえて、強くて優しい腕が私を抱きしめた。

「ダイバぁ……」
「これに関しては俺の想像だけどな。エミリアは一人で抱え込みすぎだ。俺に過去をみせたのは、そんなエミリアの心の負担を軽くするためだ。エミリアのことを知っている俺には何を言ってもいい、甘えてもわがまま言ってもいい。エミリアの気持ちを吐き出す相手に俺を選んだんだ」
「…………お兄ちゃんの代わり?」
「お前のお兄ちゃんはおまえを大事にしてて、それ以上にまっすぐ正しい道へ進めるよう示してきた。俺にはそんな高尚なことはできないが……エミリアと一緒に道を探して一緒に進んでいくことができる。一緒にいこう。大丈夫、エミリアの人生くらい俺たちが背負ってやるさ」
「……なに、それぇ。プロポーズみたい」
「『兄妹の絆』だ。何でもお兄ちゃんに任せろ」
『お兄ちゃんにまっかせなさ~い』

ダイバの声に亡くなったお兄ちゃんの声が重なった。
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