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第九章
第384話
しおりを挟む「ねえ、ダイバ。昨日今日の周囲の対応、変わったのと変わらなかったのといるね」
「……ああ、魅了の女神の影響がエミリアから完全に移ったということだな」
「アゴールの様子はどう?」
「アイツは変わらん。元々、同性にも異性にも人気があったからな。ただ、フィムがアゴールに甘えられるようになった」
「フィムの様子から考えると、私から抜けた、もしくはアゴールの胎内に入り込んだのは、私たちが調査でダンジョン都市に向かった日。鑑定スキルを持っているエリーさんも一緒にでた隙を狙われたってことだね」
「ああ、エリーならフィムが怯えたら原因を調べようとアゴールに鑑定をかける。そうすれば見つかっていた可能性が高い」
そう、その可能性は高い。ただ、なぜ私から離れることを選んだのか?
「あの封印された国に近寄れない、もしくは『近寄りたくなかった何かがある』ということか」
「あれは妖精、騰蛇。そして神獣たちの順番で結界と封印が行われていた。騰蛇は神の眷属。可能性からいって騰蛇から神たちに存在を知られたくなかったようにも思われるけど……。ここは騰蛇が作ったんだから、それはありえない」
「妖精たちにバレた様子もないな」
そして、いま変わったこと……。
「城門の魔導具」
「ん? 急にどうした?」
「ポンタくんからもらって付けた城門の魔導具って……出入りに有効なんだよね」
「ああ、そうだ……エミリア、まさか?」
「うん、魔導具で出るに出られなかった可能性が高いよね」
私は王都へ行ったり、潰したり、神獣たちと遊んだりしては城門を通って帰ってくる。唯一、アヘン芥子やコバルトの回収に行ったときに、アラクネの糸で地下から移動していた。
「そう考えると、女神は弱っている? もしくは身体を喪っているか?」
「だから、憑かないと生きていられない?」
「そういえば『気付いたらいなくなっていた』んだったな」
「身体をどこかに隠した? ……じゃあ、可能性は?」
「誰も近付かない、近付きたくない場所?」
「好奇心が強くても近寄らない……?」
そんな場所、大陸ごとに必ずある。
「……ねえ、バラバラ殺神事件ってことはない?」
「なんだ? その物騒な物言いは」
「可能性なんだけど、大陸ごとに嫌がられる場所ってあるんじゃない? そこに身体の部位をわけて隠してある。だから、あちこちに気配があるのに見つからない」
「そんなところ、あるの……あったな。俺たちがいた大陸に一ヶ所」
「この大陸にあるよね、コルスターナの湿地帯。エリーさんたちのムルコルスタ大陸にも、愚か者が神を怒らせて滅びた国があるってコレに載ってる」
そういって取り出した『世界全集』。このダンジョン都市でも売っている本だ。
「その国は一夜で滅び、いまでも国は結界で覆われて入れないんだって」
「そいつはエリーに調査を依頼しよう。女神云々ではなく、なぜ今もそんな場所が残っているのか。そこは今どうなっているのか」
「それで、ムルコルスタ大陸で魔法が衰退してる原因もわかる?」
「ああ、そうかもしれないな」
ダイバは難しい表情で頷いた。
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