私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第八章

第364話

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《 エミリアから報告があったと思うけど、封印自体に問題はなかった 》

妖精たちも一緒になって報告会に参加している。
すでに私たちは二重結界の中だ。みんなは騰蛇とアラクネから二重結果とバーベキューの情報をえていたようで、二重結界を張るまでに戻ってきて荷馬車の中に隠れていた。

「封印の中にいってたみんなも戻ってきたの?」
《 だってバーベキューだって聞いたから 》
《 封印の中のことは食事会のあとでね 》
《 じゃあ、封印状態などの報告もあとにするよ 》

そんな妖精たちの言葉を伝えると、全員も了承した。

「美味いもん食ってるときは楽しみたいよな」
「酒は抜きな。……まあ、遠征時は酒抜きがルールだからな」
「ノンアルのサングリアがある。そいつで我慢しようぜ」
「そっちのも、美味い酒はダンジョン都市シティに帰ってから一緒に飲もうぜ」

調査団に加わっているダンジョン都市シティの守備隊や警備隊の人たちや鉄壁の防御ディフェンスの皆さんでそう話が決まったのだ。


「エミリアからは封印自体に問題はない。ただ、『封印の中で何か黒いものが見えた』とは聞いた」

ダイバの言葉に《 やっぱり見ちゃったんだ 》と地の妖精が私を悲しげに見あげて、光の妖精が私の頭を撫でる。今も同調術を使っているため、その様子は全員に見えている。

「光の壁ではっきり見てないの。なんだろうって思って、よく見ようと思ったら、ちぃちゃんが目を隠しちゃったし」
《 見てない? 》
「うん、見えなかった」
《 よかったー 》

そういって安堵の表情をみせる妖精たち。周囲にいる『封印の中にいっていた』妖精たちも安堵しているということは……

「いや~なもの?」
《 …………ウン、エミリアにもの 》
「女性陣に見せないで俺たちにだけ見せられるか?」
《 できる。……けど、よ 》
《 ぼくたちでも気持ち悪くなったもん 》

その会話だけですでに見たくない……

《 エミリア、こっちきてー 》
《 エリーもミリィもー 》
「あ、俺も……」
《 うん、向こうにいきたい人はいってー 》

妖精たちに促されて、私たちは二手に分かれる。残ったのはダイバやキッカさん、コルデさんたち八人。

「アルマンもこっちにきたの?」
「こっちの方が面白そうだからな」

そう言って私の隣に座る。みんなは地面に直接座っている状態。私は座ろうとしたら胡座をかいて座ったエリーさんの中。ちなみにエリーさんの下には小さな空気の風船ができている。

「直接座ったら汚れるし、お尻が痛くなるでしょ」
「あれって、絶対エミリアさんをミリィやダイバが膝に乗せているのが羨ましくってやってるんだぜ」
「え? そうなのですか?」
「そこ、うるさい!」

エリーさんがそういって、調査隊の人に話すユージンさんを睨む。あれ? 訂正しないということは本当ってこと?

《 こっちは、これだけだね。じゃあ、いくよ 》

風の妖精の言葉とともに地中から金色の光の糸が現れると私たちを覆った。若干の浮遊感のあとに金色の壁が解かれると……

「「「助けてくれ~!」」」

右に左に追いかけっこをして遊んでいる……キマイラ。口を開けて追いかけて、時々前を走る頭をパクパクしている。

「あれはなに?」
「彼らはエミリアをいじめた連中。ダンジョン都市シティの警備隊なら見覚えがあるんじゃない?」

アラクネの言葉に警備隊隊員の一人が頷いた。

「ええ、彼らは奴隷市に潜り込んだ奴隷解放軍ですね」
「それだけじゃないわね。向こうの『死隊』ってなんなの?」

エリーさんが向いている先には、すでに精神が壊れた状態で一点を見つめてぼんやりしている男たちが固まって座っている。

「エリーさん、彼らはだよ」

そういった私をみて、周囲のダンジョン都市シティの人たちの反応をみて、あとでダイバたちに聞こうと考えたのだろう。「そう、悪い人なのね」とだけいって膝の上に座る私を抱きしめた。

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