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第八章
第350話
しおりを挟む「エミリアさんですよね。レシピを譲ってもらえませんか?」
「エミリアさんです。レシピを譲る気は一切ありません」
色ガラスを製品化させて、一度だけ香水瓶にして売りだした。ただでさえ高価な香水を色ガラスに入れて販売するため、香水は50ミリリットルという少量にした。これで以前から透明のガラス瓶にいれて販売している香水の二倍の金額。そして香水によって瓶の色を変えてみた。
毎度のごとく購入個数を制限しての販売。……にもかかわらず、新作の香水は大好評で、用意した各種三百本が売り切れた。女性より男性の方が購入していて、聞いてみたらプロポーズに欲しいアイテムランキングのトップだったらしい。
そのため、色ガラスのレシピを求めてバカが湧いたな~と思っていたが、以前とは大きく違っていた。一度断るとそのまま引き下がり、二度と接触してこないのだ。
「これって自然浄化効果?」
「これが普通の対応よね」
「今までが異常だったのよ」
私の疑問に、ミリィさんとエリーさんが苦笑しながら答えた。
今年は秋からダンジョン都市にきているエリーさんたち。エリーさんがエルフの里から連れてきた十二人の様子を気にして早く来たがったかららしい。
「果樹園で働く十二人は良く頑張ってるよ。一度、妖精たちに任せた農園を覗いて地面に半分埋められたけど」
そう報告するとエリーさんだけでなくキッカさんたちも青ざめた。
「仕方がないよ。あそこは『行き場をなくした妖精たちのため』に作った農園なんだから。そこにエルフが顔を出したら『自分たちの場所が奪われる』って思うでしょ」
だから覗くな近付くなって厳命したのに。
そういった私は「行き場をなくした?」とキッカさんに聞かれた。
「何かあったんですか?」
「……いつものことだよ」
神が見捨てた大陸では数年に一度起きる大旱魃。それに続いて今年は秋の時点で冬と間違いそうなくらいに気温が下がっている。冬に雪が降らなければ、翌年は水不足でさらに被害は広がる。
「今年はその二年目、だったんだ。妖精たちだって住むところがなくなれば弱体化する。……農園にいる子たちは空魚に救われてここまで連れて来られたんだ」
事情を知った都長ヘインジルは、ほかにも妖精たちが逃げ込んでくる可能性を考えた。自力でこられなくても、通りかかった馬車に乗ってくる。その妖精たちが中に入れるように城門の魔物よけの魔導具に( 妖精はのぞく)という追加をした。
そんな優しさで増えた妖精たちをそのまま放置できなかった。そのため、農地を購入して妖精たちに任せることにしたのだ。
「ちゃんと育てられるというなら種苗もあげるよ」
《 やったー! 》
《 まずはタネのベッドを作ってあげなきゃ! 》
《 エミリア、僕たち頑張るね! 》
人間の真似をしたがっていた妖精たちは、大喜びで農地を農園に育て上げた。手伝いをしたいだけの妖精たちは、バラクルの農園で手伝いを楽しんでいた。そして果物を育てたい妖精たちが《 僕たちもー! 》と訴えてできたのが果樹園だった。
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