私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第八章

第343話

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「調査の結果を伝えるね」

私の店の一階にアラクネの糸で連れてこられたダイバは、はじめてのアトラクションに脱力していたが、私の言葉に真面目な表情になって身体を起こした。

「まず……これから」

そういってアヘン芥子を取り出す。植木鉢に一本ずつ植えたため、花が咲いている物と芥子坊主になっている物。そして、芥子坊主に傷をつけたため液が垂れている物。
私が細かく説明していくと、ダイバも疑問に思ったことを口にする。そうやって長く話し合い、最大の問題にたどり着いた。

「有効な使用方法は見つかったか?」
「薬理加工で抽出したコデインで咳止め。これは摂取しても中毒にならない。鎮静剤の効果もあるから、病気治療にも使える」

薬理加工とは、薬草などから薬剤となる成分を抽出しそれを加工する薬師やくし技術のこと。この世界特有の技術だ。
そしてコデインを抽出できた。その効果は咳止め。それは日本でも違う方法だけど同じ効果があった。それに水飴を混ぜてのど飴を作った。
日本で売られる風邪薬の中や咳止めとして処方されるリン酸コデインリンコデとほぼ効果は同じだった。

この世界では治療魔法を使われるが、鉱山や土木工事に送られた奴隷たちには治療魔法は使われない。鉱山でも最深部に送られる永久奴隷使い捨てには特に。薬自体は使われるが、即効性の薬は高価となる。そして、薬が使われるのも借金奴隷や犯罪奴隷のように『生きて娑婆シャバにでられる奴隷』にだけだ。
……つまり、薬代が借金に加えられることが前提になっている。

「エミリア、作っても構わんがは忘れるなよ」

ダイバの言葉に黙って頷く。

『レシピは公開しない』

それがダイバとの約束。それを守るから、ダイバは危険物でも私に使用許可を出してくれる。……ダイバは私が『異世界から来た』ことに気付いているのかもしれない。私が聖女だと知っているミリィさんやエリーさんたちはいわないだろうから、竜族特有の勘みたいのがあるのだろう。


「次、は……コバルト」

コバルトは青色ガラスを作るときにケイ酸コバルトとして使われる。ガラスがとして反応するから、という実験を日本で見たことがあった。錬金窯にガラスとコバルトを入れて成功している。これもレシピは非公開。

「コバルトの存在は公開するな」

ダイバにコバルトの危険性を説明したときにそう厳命された。ダイバに説明したのだ、コバルト爆弾の危険性を。水素爆弾とか核爆弾などいってもわからないだろう。そのための上級魔法『大爆発エクスプローション』の外側にコバルトで覆って威力を増すと説明した。実際にはコバルト爆弾は核爆弾の一つだ。そして水魔法の『大爆発エクスプローション』は威力によっては水素爆弾に匹敵する。

「水素ってなんだ?」
「水を形成するものの一部」
「水が爆発するのか?」
「するでしょ、見たでしょ、騒動になるでしょ、死傷者もでてるでしょ、ダイバたちも緊急出動するでしょ」
「……なんだ?」
「移動する間欠泉」
「ああ! アレがそうか!」
「地下水に圧力がかかって地面から噴き出すアレもそう。圧縮されたせいで高温になった水が、地面の弱くなった場所に集まって……ドカーン!」

この世界にも間欠泉がある。ただし毎回おんなじ場所で噴き出るのではなく、完全に自然災害レベル。どこで起きるか分からない。過去には、町や村の下から噴きでて壊滅状態になるっていたこともある。
実は『怒った水の妖精が領都を消滅させた』という伝説も、この間欠泉による被害だった可能性が高いといわれている。
今では地下水脈の上で起きることは判明しているため、町や村は地下水脈を避けて作られている。そして地下ではない水脈を魔法を使わずに人力で引いている。魔法を使わないのは、近くにある地下水脈に影響を及ぼすからだ。
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