私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第八章

第333話

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メッシュが私に視線を向けてきたから目を見て頷いた。……それだけだ。たったそれだけで、彼女の今後はメッシュたち情報部の手に握られた。

「シルキー、立ちなさい」

メッシュの言葉に震えながら縋るように彼を見上げるシルキー。残念ながら、正式な記者たちメッシュは魅了遮断の魔導具をつけているため、メッシュには効かない。情報漏洩を防止するための対策で、たとえ家族であっても許されないらしい。シルキーは魔導具を受け取っていないようだ。そうじゃなければ、魅了スキルを使っても色気をだしてもムダだと知っているハズだ。それを知らないということはまだ見習いになって間もないのだろう。
……今日の会議でその指導があったかもしれない。

「シルキー、言われた通りにしなさい。犯罪奴隷に堕ちたくなければ自分で申し開きをする必要がある。ここまで騒ぎを大きくして過ちを謝罪しない者の罪を問わず罰を与えないという選択肢はない」
「……え?」

シルキーは何を言われたのかわからないという表情でメッシュを見上げた。彼女の頭の中では、メッシュに魅了が効いて自分を守ってくれると思っていたのだろう。その一瞬の表情で、その場にいた全員が理解した。

「メッシュ。アレは調査した方がいいかもね」
「ええ、そのようですね」

魅了ほど怖いものはない。それにまんまと引っかかったのが、昨年短期間で都長を交代したヒックスだ。彼は治療を受けて、今はヒラからやり直しをしている。
ここまで言えばわかるだろう。
そう、ヒックスを魅了したのはシルキーだ。そのウラドリのために彼女を仮採用……見習いとして採用した。この都市まちでは魅了は封じられて使えない。にも関わらず、今までも何度か魅了関係のトラブルが起きてきた。アウミの騒動で魔導具が効いていない可能性をダイバから知らされた情報収集管理課ウラチョウが動いている。
ちなみに魅了スキルが全然効かない者もいる。身近な人物代表はアゴールだ。魅了は同性でも効果があるが、それをはねつける精神の強さが彼女にある。アゴール自身に魅了スキルを使われたことを知らず、魅了をはねつけた自覚はなく。魅了を使った側も魔導具で効かなかったと思っているだろう。

エリーさんが与えた『エルフの祝福』は胎児を守り無事に生まれるためのもの。出産と同時に解除されている。魔導具自体も、妊娠中に私が渡した試作品の魔導具うでわ以外、何も使っていない。その試作品も、行動を抑制するものだ。
そのことを関係者以外の人たちが知る日はこない。
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