私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第八章

第323話

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「皆さん、申し訳ありませんでした」

一人がそういって勢いよく頭を下げると、後ろの男たちも黙って頭を下げた。

「だってさ。エリーさん、どう思う?」
「エミリアちゃんの好きにしていいわ」
「だって」

私が短くいうと、頭を下げていたエルフたちが『やれやれ』という表情で顔を上げた瞬間に顔面を硬直させた。

「あ、あの……」

私たちは誰も口を開かない。ただ誰もが冷めた目を向けているだけだ。

「あ……え、と」
「あの、何を」
「誰が許したんだ?」
「…………え?」

困惑している連中にイラつきはじめた中、ダイバが呟いた声が静かな室内で大きく聞こえ、エルフたちは驚きで目をまるくした。

「誰がお前らを許したんだ?」
「え? しかし今……」

エルフたちの視線が私に集中する。何かを感じ取ったのか、縋る目で見てくるエルフもいる。

「私は『エミリアちゃんの好きにしていい』といっただけだ」
「もちろん、私は許す気なんてないよ。そんな簡単に許してもらえるなんて……よく思えたね。狂ってるよ、アンタら」

私の言葉で表情が恐怖に変わる。震えているエルフもいるから、私が次に何をいうのか気付いているのだろう。目に涙を浮かべてイヤイヤと顔を左右に振るエルフもいる。
ご期待に応えて差し上げよう。

「お前ら全員は罪を犯した罪人。ということで『森の牢獄』で残りの時間をお過ごしください」
「や、やめてくれ!」
「いやだ! あそこはイヤだ!」
「頼む! 俺は……何も悪くない!」
「それで?」
「……え?」

私の言葉に、騒いでいたエルフたちの動きが止まる。エルフって一体どうなってるの? 個性はないのだろうか。せめて仲間を落ち着かせて話を聞くという大人はいないのだろうか。

「だから、それを小さかったミリィさんにしようとしたんだよね。何もしていない、ただってだけで。ああ、ここにいるルーバーも巨人族のハーフ。そして、騰蛇のところで会ったヤンシスもミリィやルーバーと同じだよ」

その言葉にミリィさんとルーバーを見比べるエルフたちの表情には『信じられない』という感情がありありと窺える。

「ああ、最近知ったんだけど。って、全体の一割もいないんだって。そして彼らは隠れ住んでるから、『世界全集』にある巨人族って実際には他種族と婚姻を繰り返した一族のことだよ。数年前に追加されたから知らなくても仕方がないけどね」
「そうそう。エミリアちゃんにその話を聞いたってミリィがいったから調べてみたけど……。結論からいうと、そう追加表示されていたわ。純血の巨人族はヤンシスと同じ十四歳ですでに二メートル前後。大人で三メートル近いそうだ」

私たちの言葉にエルフたちは絶句する。

「私は直接会ったことがあるし、今でも付き合いがあるけど……。彼らは優しいよ。魔人とか獣人と同じでね、魔物が知恵を持った種族なんだって。元々巨人族ギガンテスは大きな身体だから、こういう町にはいれないんだって。それで森などに空間魔法を使って集落を作って住んでいる。その中で人と交わり小さくなることに成功した巨人族がいる。彼らはミリィやルーバーたちみたいに生活できている。、っていうのが彼らの事実だよ」
「そ……そんな。じゃあ……」

震えながらミリィさんを見るエルフの一人。

「この世界で厳禁されている『種族差別』をした。だからエミリアちゃんがいったでしょ、「アンタらは罪人だ」って」
「あ……あ……」

自分たちが間違っていたことをようやく理解できたようで、力なく床にへたり込んだ。
どんなに涙を流して後悔しても……もう遅い。
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