私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第八章

第309話

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「初日は労働が免除される。その代わり、明日から労働者として働いてもらうから、今日はしっかり休みなさい。小屋の中の材料は自由に使っていい。ただし、自分たちで作るように。そしてここから出ることは禁止。料理を作るのが面倒だからといって食堂の料理を食べるのは自由、でも料理代金は借金として追加される」
「僕たちは自分たちで作ります」

真っ先にそう宣言したのは、ウルクレア国出身の二人。ゼオンとヤンシスの借金は共に六百万ジル、白金貨六枚だ。順調に借金を返していけば三年、遅くても四年目には自由になれるだろう。

「僕たちは……すみません、食堂の食事をお願いします」

バラクビル国から来た四人兄妹は、一番上が十歳のセウル。アリアスが八歳でキルヒが七歳、最年少が唯一の女の子だけどアリシアの年齢は五歳。まだ大人の庇護を受けても許される年齢だから、料理ができなくてもおかしくはない。

「そうなると七年から八年ってところかな? セウル、キミは八千万ジル、白大金貨八枚だから二十年はかかるよ?」
「はい、構いません」
「聞くけど、奴隷から解放されたらどうするの?」

そう聞いたら、ウルクレア組とバラクビル組は各々で顔を見合わせる。

「ゼオンとヤンシスは、ルーバーたちの店で下働きでもする気?」
「……できれば」
「この都市まちでは、犯罪者はお店には入れない。それは奴隷でも同様。犯罪者の罰の一つが奴隷だからね。だから、二人はルーバーたちの店で働けない」
「そんな……」
「何とかなりませんか」

二人はルーバーに訴えるが、ルーバーはミリィさんに目を向けるだけで何もいわない。

「誰に何をいってるの? あそこはミリィさんの店がオーナーであってルーバーに権限はない。アンタらはミリィさんを見下してるけど、気付かれていないと思ったの? ミリィさんのこと、一度も聞いていないよね。みた通り、巨人族のハーフだよ。じゃあ、キミたちは? どう見ても生粋の巨人族じゃないよね」

私の言葉にルーバーもゼオンとヤンシスと共に驚いた。

「これが巨人族の十四歳の身長? 人間の十四歳の身長と変わらないんだけど。ってことは……」
「ウソだ!」
「その通りです」

ヤンシスの言葉をゼオンが訂正した。ヤンシスがゼオンを睨むものの、彼に冷たい視線を返されると唇を噛んで俯いた。

「僕たちも、いえ、村のほとんどが過去に人の血が混じっています。本当の巨人族なんて、すでに魔物の巨人族ギガンテス以外にいません」
「うーん……。この地に少しは残ってるよ、純血の巨人ギガースたち」
「ホントですか⁉︎」
「そう。だから、キミたちの身長があわないことに気付いた。十三歳の少年で、すでに二メートル近かったから」

八歳の女の子に身長を抜かれてた、とはいわない。……悔しいから。
ちなみに『ギガンテス』という呼び名は複数形。個人が『ギガース』。それは巨人族でも魔物でも同じ。というのも、魔物が人と同じ知識と秩序を持ったのが巨人。いわば、魔人や獣人と同じ立ち位置なのだ。

「竜人も忘れるなよ」

……他にも魚人族ハゥフル翼人族テンシなどの種族も存在している。魚人族を『ハゥフル』と呼ぶが、単体では男性が『マーマン』で女性が『マーメイド』と呼び名が変わる。ただ、『上半身が人型で下半身は魚』という点では人魚と変わらないようだ。

「だから、竜人も忘れるなって!」

…………だそうだ。
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