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第八章
第303話
しおりを挟む無事に九人の奴隷と契約をして、ダンジョン都市の住人専用の城門へと向かう。
「よう、エミリア。その後ろの連中がエミリアのお眼鏡にかなった奴隷たちか」
「うん、そう。ヘインジルたちはまだ?」
「ああ、奴隷を数人ずつわけていれてるぞ。アイツらは何人と契約する気だ?」
「三十五人。追加はないと思うけど」
「ということは、まだ二十人は残ってるな」
私たちの会話の間に、隣で子供たちは水晶の鑑定石で正式な奴隷契約がされたのかチェックを受け、問題がなければ中へはいれる。
「よし。エミリア、子供たちは全員問題なかったぞ」
「ありがと、ダイバ」
水晶の鑑定石に手をかざして私も門を通る。
「その子ら、どうするんだ? エミリアは引き取らないんだろ?」
「バラクルの農園で働いてもらうことにした。私も野菜をわけてもらったりしてるからね。人手が増えればフーリさんたちも楽になるでしょ?」
「ああ、俺たちも食事を運んでもらっているからな」
「それにこの子たちの親が食堂を開いていたらしいから、店を手伝わせるのもできるでしょ。借金を返済し終えた頃にはバラクルの料理を身につけているし、農作業の基本も覚えてるから二度と奴隷になることはないよ。他の子も農家からの身売りだからね。望めば、新しい農村が軌道に乗った頃に移り住んでもらってもいい。あっちは開拓作業から始まるからね。子供の労働力はいらないんだよ」
そう開拓。まだ何もない場所に家を建て、それから田畑になる土壌を均す。すべてが整った環境で引き継がれるのではない。
妖精たちには協力しないように伝えてある。というのも、毎年妖精たちに同じだけの協力してもらえるならいい。しかし気まぐれな妖精たちだ。何か面白いことが見つかればそちらにいってしまう。その時に、妖精たちに甘えてきた人たちはどうするか? 妖精たちに協力を強要するだろう。それが『妖精を捕まえて使役する』という発想に向かないとは言い切れない。加減を見誤って、大災害を起こす可能性だってある。
逆に、人的被害を妖精たちのしわざと責任転嫁される場合も起きる。
「共存したければ線引きは大切」
妖精たちにそれを説明したら、契約していない妖精たちもちゃんと理解した。そのため南部に作られる農村に妖精たちは手を出さない。
「代わりにウチの田畑を手伝っておくれ」
そう言って豪快に笑ったのはシューメリさん。南部に近い端に位置する食堂の裏には広大な田畑が広がり、食堂で使う野菜を育てている。そして、私の妖精たちがちょくちょく手を出している。作物によって水の量を変えたり、土に栄養を与えたり、光合成を促したり。それを知っているから、作物を無料でわけてくれる。その代わりに、ダンジョンで確保する肉や魚だったり、岩塩や植物から採れるスパイスや砂糖を優先的に卸している。
そこに私が買った奴隷たちを預けて、しっかり働いてもらうのだ。
…………その前に、顔合わせが待っている。食堂の方は臨時休業している。ミリィさんとルーバーも店を臨時休業して食堂で待っている。
「アゴールを待った方がいいかな?」
「いや、アゴールには先に説明をしてからの方がいいだろう」
ダイバには事情を説明してある。そんなダイバが『あとがいい』と決めたため、アゴールにはヘインジルの護衛を頼んだ。
「大丈夫だ。アゴールはちゃんとわかってくれる」
ダイバが頭を撫でてくれる。それだけで、今もまだ困惑している私の気持ちが落ち着いていった。
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