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第八章
第291話
しおりを挟む妖精たちをポンタくんと会わせてみようと思っていたが、妖精たちを直接送るのも、物の中に隠して送るのもできなかった。
「すでにエリーたちの荷物に隠れてやってきた妖精たちがいますよ」
「契約していない子たちだよね? 長旅だったでしょ。大丈夫だったの?」
「大丈夫じゃないですよ。ただ、船の中でエリーが気付いて、テントの中で保護してきました。今度そちらへ向かうときに連れて戻ると思います」
「まったく……捕まったらどうする気なのよ」
それより、水と光と風の属性でなければ、何もない波の上だ。最悪、死んでいただろう。
「エリーがいなければ、誰にも気付かれずに消滅していたと思います」
…………もう、脱力感しかなかった。
帰ったら、ピピンとリリンから罰を与えられるだろう。
「二人とも。あの子たちは未契約の子たちだから、ちょっとしたことで消滅しちゃうから」
《 ひと月たったら生まれ変わるから大丈夫 》
「コラコラ。そこで煽るんじゃないの」
《 じゃあ、エミリアが契約すればいいじゃん 》
《 そうだね。契約に制限はないし 》
「そういう問題じゃない『バッチーンッ』……って、いいたかったんだけど」
ピピンが触手でテーブルを叩くと、リリンが風と地の妖精たちを左右の触手で捕らえるとブンブンと振り回した。
《 エミリア、ピピンとリリンが『代わりに二人が罰を受ければいい』だって 》
《 エミリアが契約したら、魔力のコントロールとか大変だもんね 》
《 白虎が『いつもの鳥籠の中に閉じ込めたら?』だって 》
ガウッ
確かに……帰ってくるときに鳥籠の中に入っていてもらった方がいいと思う。
「エミリアさん。その鳥籠をお借りすることは可能ですか?」
「今から?」
「いえ、エリーたちがそちらへ向かうときで十分です」
「そうですね。イタズラ好きだから、ほかの人……行商人についていって各地を回るとか……」
「しそうですね」
「でしょう?」
「……問題が起きる前になんとかしなくてはいけませんね」
このダンジョン都市では、増えた妖精たちのイタズラの被害はない。というのも、神獣という存在があるからだ。神獣の領域を荒らすわけにはいかない。自由奔放な妖精たちでも、それくらいの常識は持ち合わせているようだ。
神獣とまでいかなくても精霊が二人いるから、イタズラ自体少ないかもしれない。
ちなみに、鳥籠はポンタくん経由でエリーさんに貸した。というのも、リリンが妖精たちに罰を与えるようになったから鳥籠がなくても大丈夫とピピンが判断したからだ。
「結界の中に閉じ込めてもいいよね」
《 い~や~あ~‼︎ 》
……悲鳴をあげたのは、リリンにブンブンと振り回される回数の多い、光と風と地と火の妖精たち。以前、結界石で結界を張った中に閉じ込めたら、誰も結界から出られなかった。
それに気付いたピピンが部屋の一部に私の魔力を流した結界石を置いて、悪いことをした妖精たちを閉じ込めるようになった。魔物は結界石に触れないが、聖魔師と契約した聖魔は結界石を触ることができる。そのため、お説教部屋に結界石を置いている。
「聖魔になったら私の結界石を使えるんだったら、同じく契約して聖魔になった妖精だって使えるはずだよね?」
しかし、妖精は結界石に触れない。というのも、調合窯や錬金窯と同じように妖精たちの『イタズラ防止』がついているからだ。
《 昔イタズラしてた妖精たちのバカァァァ‼︎ 》
というわけだった。
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