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第七章
第277話
しおりを挟む《 『気持ちの持ちよう』って大事だねぇ 》
《つっかえがなくなったら、すぐに同調術が使えるようになったんだもん。すごいよね 》
《 それだけじゃなくて、使える魔法だって増えたんだもん。『できること』が増えて良かったよね 》
「……これでよかったんですか? ミャウリさん」
私はベッドに臥せるミャウリさんに目を向ける。弱々しく臥せるミャウリさんは、優しい笑顔で何度も頷いた。
「すまなかったな。アヤツはワシに依存しすぎておったんじゃ。このままワシが死んだら壊れてしまうくらいにな」
魔人ではなく土鬼の姿で臥せる彼には、すでに魔人の姿になるだけの体力が残されていない。とんがり帽子にエルフ族同様の長い耳、そして長いヒゲ。日本で読んだ童話に出てきた精霊のノームにそっくりの姿。
「魔人になったことで本来の寿命を越えて生きてきた……。すでに妻も子らもこの世を去った。孫も半数を見送った。……やっとワシの番が回ってきたようじゃ」
そんな彼の妖精から請われて、私はミャウリさんと会っていた。『心のこりを少しでも消してあげたい』という願いを叶えることにしたのだ。
彼は一目見て私を聖女だと気付いた。…………そして涙を流して謝罪された。「申し訳ない」と。「自分が謝っても許してもらえないと思うが、愚かなこの世界に生きる一人として謝らせてほしい」と。そういって、地に伏せて謝り続けた。彼の孫もひ孫も玄孫も、ミャウリさんと一緒に地に伏せた。
「皆さん、頭をあげてください。すでに当事者たちには『不死人』の罰が人々の手で与えられました。あと残っているのは『神への報復』です。そちらはいずれ、この手で……」
私の笑顔にミャウリさんはなぜか破顔した。
「他人に任せず自分の手で実行する意思が強かった」
「やっぱり、元凶相手くらいは自分の手で引っ叩いてやりたいじゃないですか。それで気が済まなかったら、魔法を何発でもぶち込んでやるつもりです。どうせ神ですもん、『何をしても死なない』でしょ?」
「それは良い心がけじゃな」
私が本音で話していることに気付いて面白そうにしていた。
「エミリアさん、ありがとうございます」
「きっと、ひいじいちゃんも喜んでると思う、ます」
「ハハハ、いい直さなくていいよ」
ミャウリさんの孫娘さんとまだ若い彼女の息子さん。二人に連れられてミャウリさんのお墓に報告にきた。
「ミャウリさん。ルブランたち一家は、同調術を使って無事にパルクス国からもこの大陸からも逃げ出せたよ。たどり着いたのは私が以前いたムルコルスタ大陸エイドニア王国だって。そこで過ごして、それからシメオン国に向かうって。たぶん、そこを終着地にするつもりだって」
そもそも、パルクス国は聖魔師に優しい国だった。しかし、聖魔師の数は減り、聖魔士の数が増えた。そして、聖魔師に無礼を働けば妖精に国を滅ぼされる。何より聖魔士と違い、国王でさえも聖魔師に命じて動かすこともできない。
そのため、聖魔師の存在がほしいコルスターナ国と追い出したいパルクス国との間で話が進んだのだ。ちなみにパルクス国はコルスターナ国から『聖魔士くずれ』の身柄を受けとることになっていたらしい。どちらも約束を反故にした以上、国交も途絶えるだろう。
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