私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

文字の大きさ
上 下
262 / 789
第七章

第275話

しおりを挟む

「……むずかしい」

ルブランは妖精たちと同調するのに時間がかかっていた。焦れば焦るほど心が乱れてしまう。

「お父さん、頑張って!」

そんな父親の気持ちに気付かない子供の声援に、ルブランの心が掻き乱されてしまう。

「ルブラン。ちょっと休憩して」

私の声で、妖精たちから手を離したルブランがゆっくり草原に座る。

「じゃあ、面白いことしてあげようか」
「なに?」
「何をするの?」

私の言葉に目を輝かせる子供たち。

「ちょっと見ててね」
そういうと風の妖精が光って私と同調する。
「うわあ!」

私の外見が『銀色のポニーテール姿』になったのを見て、子供たちが歓声をあげる。そう、これが『乗り移らせる』という方法だ。もちろん私に主導権がある。この状態で風の魔法も妖精の妖力チカラも使える。

「これで魔法を使えば妖精は簡単に使い方を身につける。でもね、これでは魔法の加減がわからないから危険でもあるんだよ」
「なんでー?」
「使う私の魔力が基本だからね。小さな妖精が大きな私と同じだけの魔力を使うのはむずかしいの。ほら、二人が頑張ってもお父さんやお母さんみたいに何でもできないでしょう? それと一緒だよ」

私の言葉に「「そっかー」」と声を揃える子供たち。
ぴょん、と私から風の妖精が離れると、私は元の姿に戻った。

「じゃあ、今度は妖精二人との同調術ね」

そういうと、右手に水の妖精。左手に光の妖精がくっついて同調術を開始する。それを安定させると二人が空に手を伸ばした。それにあわせて虹があらわれる。風と地の妖精が手を繋いで目を閉じると、空からピンク色やオレンジ色の花びらが降ってきた。

「わあ!」
「すご~い!」
「虹は水と光の妖精たち。花びら吹雪は風と地の妖精たちよ」
「……きれいだわ」
「ああ」

子供たちの声に続けてフローリアとルブランの声も聞こえた。

「こらこら。ルブランは自分でできるようになりなさい」
「自分にもできるでしょうか?」
「できるわよ。これは妖精と心を通わせられる聖魔師テイマーだからできることなんだから」
「パパ、がんばって」
「お父さんならできるよ」

子供たちの声援にルブランの妖精たちも《 できるよ 》と頷いている。しかし、ルブランの表情はさえない。

「……ルブラン、もしかして『同調すること』が怖い? 自分が乗っ取られると思ってる? それとも、心に隠したことや思ったことが覗かれるって思ってる?」

私の言葉に一瞬身体が揺れた。

「ああ、やっぱりね」
「……すみません」

『同調』と聞いて、まずそう思うのだろう。
実は私も同調術を教わってるときに、ギャグでそのやりとりがあった。

「えー、私の考えてることが読まれちゃう?」
《 そんなことないって 》
《 じゃあ、今なにを考えているの? 》
「……美味しそうだな~、ジュルリ」

チラリと光の妖精を見ながらヨダレをぬぐうマネをしながらいうと、みんなの視線も光の妖精に集中する。

《 ちょっと! 私は美味しくないってー! 》
ペロン
《 きゃー! 》

光の妖精の背後から近寄っていた白虎が、光の妖精を軽く舐めたことで悲鳴をあげた。

「ば~い、白虎の心の声をアフレコしてました♪」
ガウガウ
《 白虎が『味見したけど美味しくない』だって 》

白虎の声を通訳した水の妖精の言葉に全員が爆笑した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います

菜花
ファンタジー
 ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。