私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第七章

第262話

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「エミリアちゃん、ちょっといいかしら?」

エリーさんからそう言われたのは、屋台村の横の広場に置いた塔から出たときだった。結界石を置いたときと同じ構造で、狭い部分に結界を張り、中の空間を広げるというもの。ちなみに私が借りたのは一辺が八十センチの場所。その四方に結界石を置いて塔や仏像をだした。結界を張る前は狭くても、結界の中はいくらでも広がる。
……魔法はなんて便利なんだろう。
そして、昼食のためにでたら、エリーさんに声をかけられたのだ。この都市まちにはミリィさんの鉄板焼き屋さんやフーリさんたちの食堂以外にも、喫茶店などがある。その喫茶店の一つに入ることになった。エリーさんのおごりで。

「エミリアちゃんがダンジョンから持ち帰った不思議な塔や像をいくつか譲ってもらえないかしら? もちろん大切にするわ」
「でも大きいですよ? どこに置くの?」
「王都に『鉄壁の防衛ディフェンス』の住処アジトがあるの。その隣が空いていてね。そこに置かせてもらえるようにみんなが話をしているのよ」
「長い間、地面の下に埋まっていたから妖精たちが大切に磨いているので、それが終わってからだったら……」
「ええ。もちろん、それで構わないわ」

エリーさんは今すぐほしいというわけでもないそうだ。ただ、ダイバが「珍しいものだからな。ここには全部置けないから他の国にも譲ってやろうぜ」と言っていたから、それで手をあげたようだ。

「他の国のダンジョンでこんな物がでてきた」

そう言って公開する見せびらかすらしい。
妖精たちが磨いていたお堂の中でも像や装飾品が見つかっていた。なぜか、お堂がそのままこの世界にきた可能性がある。装飾も掛け軸もすべてそのままの状態で見つかっているのだ。
妖精たちは毎日キレイな布で像や装飾品をキュッキュ、キュッキュと磨いている。小さな手だから、装飾の細かいところまでキレイに磨いてくれる。

「魔法でキレイにするとか」
《 ダメだよ 》
《 エミリアの世界の神様なんだから 》
《 違うよ。『仏様』っていうんだよ 》
「まあ、バカミなんかと一緒にされたら怒るよね、仏様でもさ」

私の言葉に全員が頷いた。

《 それに、もう私たち妖精は神に従わない。エミリアを苦しめた神なんかいらない。今日からエミリアの世界の神を信仰する 》
「私たちの世界は、この世界と違って『神は身近な存在ではない』からね。国によっても違うけど。ほとんどは偶像なんだよ。誰も神を見たことはない」
《 いいよ、それでも。僕たちはエミリアの世界からきた仏様だからいいんだ 》
《 エミリアもみんなも。エミリアの世界では『仏様』だってー 》
「うーん。私の国では神様と仏様って二通りあったからなぁ」
《 どうわかれてたの? 》
「宗教で」
《 ちなみに、今回見つかった仏様は? 》
「仏教」
《 じゃあ、神は? 》
基督キリスト教」
《 じゃあ、この世界は神で、エミリアの世界から渡ってきたのは仏様って呼ぼう! 》

それは私たちだけの決め事だと思っていたら違っていた。

《 エミリアがダンジョンでみつけた像を『仏様』って呼ぶことにしたよ 》

妖精たちがそう言ったら、エリーさんとそのとき一緒にいたミリィさんがダイバたちに話してそのまま決定したようだ。
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