私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第七章

第244話

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ダンジョン都市シティに向かっていたコルスターナ一行は十日後に中へ入ってきた。もちろん、メクジャも一緒だ。彼は白大金貨五枚のほかに「緊急クエストによる報酬未払いと延滞金の代理請求を受けている」として白金貨三枚と大金貨十枚を請求された。緊急クエストで砂漠のアリサンドアントが対象だったことで、冒険者ギルドに自動報告された討伐数は二百三十匹。報酬請求の白金貨三枚分は正当な金額だった。それとは別に請求されているのが未払いによる延滞金で、一日大金貨一枚。十日の延滞料のため大金貨を十枚請求されたのだが……

「緊急クエストの報酬を受け取らなかったのはあっちだ!」
「正当な報酬である以上、冒険者ギルドに出向いて届け出すのが緊急クエストを発動した側の義務です。だいたい、ここをなんだと思っているのですか? 『冒険者のための都市まち』ですよ」
「それがなんだというんだ!」
「メクジャ。緊急クエストを受けた本人から冒険者ギルドに申請が済んでいます。そのため、あなたはすでに冒険者ギルドより違反行為で手配書が出ています」
「あれは向こうが断ったんだ! こっちは同行をと……」
「なに寝ぼけているんですか? まさか、偉そうに同行を命じたことが報酬だと思っているのですか? あなたが同行を強要した者はこの都市シティの優秀な冒険者です。まだわかりませんか? あなたがしでかしたことはこの都市まちで知られているんです。それともコルスターナは常識のない国だと証明するために騒ぎを起こしているんですか? 先にきていた使者たちもあなたのように自己主張を続けて犯罪級の罪を犯しました」

門番にそう言われて、すべてバレていることに気付いたメクジャは虚偽罪も追加されて、白大金貨一枚も追加で支払いをさせられた。私の報酬と延滞金は冒険者ギルドに送られて、そこで直接受け取った。
冒険者ギルドにいた冒険者たちは、いまだに居座る彼らに不快な感情を向けていた。

「アイツら、なんで帰らないんだ?」
「聖魔士くずれの身柄は引き渡すことになっただろう?」
「職人が手直ししていた檻は完成しただろ?」
「それの支払いとして預かった金を、中に入るときの補償代金で使っちまったらしい。物納もできず、門に戻って「預けた金を寄越せ!」と騒いで捕まったんだ」

おや、それは初耳。

「メクジャって捕まったの?」
「はい、昨日です。商人ギルドで所持品を売却しても檻の改修代には足りないため、城門で騒ぎました。そのときに無関係の商人にケガを負わせてしまい、牢に入れられています」
「国から送ってもらうとか」
「それはプライドが許さなかったようです」
「他国で騒ぎを起こして投獄されるプライドは許せたんだ」

メクジャは国王から任命された、一行のお目付け役だった。
ミスリアはコルスターナの王女。兄であるジュールが国外追放されたため王籍を剥奪され、側室だった生母と共に王宮を追い出されたらしい。

「一体なんの罪をしでかして、国から追い出されたんだ?」
《 聖魔師テイマーに憧れて聖魔士を目指したはいいが、魔物は力を貸そうとしない 》
「そりゃあそうだよね。「悪いけど手伝って」っていうのと、「こっちきて手伝えよ」というのでは大きく違うよね」
《 元々、心を通わせるより命令していうことをきかせるタイプらしいね。それで、気が荒れてケンカに発展した 》
《 王子という立場で周りを見下してきたからだよ。それでバカにされたんだって 》
《 そのときに魔法を使った。風の魔法。それで相手を切り刻んだ。お互いが魔法を使い、それに巻き込まれた無関係の死傷者が多数でたため、関わった者は全員が喧嘩両成敗で国外追放 》

ケンカ相手のほとんどは冒険者。だから、国外追放にされても特に問題はなかっただろう。たとえ冒険者に家族がいても、王都からの追放処分だった。
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