私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第七章

第239話

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「ピピン、みんなを呼んで。ダンジョン都市シティまで帰りたいけど大荷物おおにもつになっちゃったの。『妖精の輪フェアリーリング』をお願いしたいのと、王都内を完全に砂に戻したいからみんなに手伝ってもらいたいんだけど……」

涙石に触れてピピンに話しかけると《 エミリア~! 》と騒ぎながら妖精たちが飛び出してきた。

《 エミリア! 大丈夫⁉︎ 疲れてない⁉︎ 》
《 エミリア! なんでシーズルの背に乗ってるの⁉︎ 》
《 ダイバ! エミリアに仕事押し付けたんでしょ! 》
「うわっ! お前ら妖精だな!」
「ちょっと、みんな。落ち着いてよ」
ヒュッ!
バチンッ!

ダイバが誤解した妖精たちに髪を引っ張られたり耳を引っ張られた。止める私の声も聞こえない。
そんな中、白虎の背に乗って現れたピピンが触手を地面につと、ピタッと大人しくなってダイバから離れた。

「ピピン。おしおきはあとでね。まず先に大荷物を送って、それから……」

私がこれからしてもらうことを、白虎から私の手の上に乗ったピピンに説明し始めたが、若干一匹が許さなかった。

《 キャー! 》
《 ゴメン! ゴメンなさーい!》
《 いやぁー! 》
《 もうしませーん‼︎ 》

白虎に乗ったリリンが四人を一纏めで拘束して、右に左に。上に下に。ブンブンと空中を振り回す。
水とくらやみの妖精たちは私を心配してしがみついていたため、リリンのおしおきから外されているが、目の前の光景に目を丸くしている。

「おい、エミリア。あれって……」
「うん。リリンにおしおきされてる」

ダイバやシーズルのように妖精が見えなくても、リリンの様子から何かを……妖精たちを振っているのがわかるだろう。

「それでね、ピピン……」
「……あれを放っておいて、そのまま話を続けていいのか」
「だって、おしおきだもん」
「シーズル。やり過ぎればピピンが止める。……そうだろ?」

ダイバがピピンにそう話しかけると、私の左手の上に乗るピピンが上下に揺れた。そのうしろでリリンも上下に揺れて、触手を上下に振って返事をしていた。
振り回されている四人には悪いけど……その可愛さに、私たちは笑ってしまった。


私たちと四つの檻を『妖精の輪フェアリーリング』でダンジョン都市シティの城門前に送り届けた妖精たちは、ピピンの指示で王都の城壁内を更地にして大地を含めたすべての砂を荒野にばら撒いた。
砂は流砂に流され、長い時間をかけて自然界のチカラで浄化されていくだろう……
大穴は数日で砂が溜まる。水を含み、時間をかけて固くなり、草木の生える肥沃な大地へと姿を変えていく。その間は王都の城壁内に誰も入れないように私が結界を張った。人も魔物ももちろん妖精も入れない。唯一結界を通るのは自然のもの。風が運ぶ砂や様々な種。雨も降るだろう。そして……人の手を加えない。何より、大地をけがして闇に墜とさないことが必須条件になる。上手くいけば、王都は再生される。
よく、これまで汚れた大地で生きてきたと思う。

《 そんな汚れた大地の上で生きてきたから、根性が腐ったんじゃない? 》
《 性格も捻れたよね 》
《 こんな状態なのに、真っ直ぐに育った方がすごいよねー 》

そう、そんな無垢な心の子供が王族にも貴族にもいた。王族の子供でも髪がある。

《 僕たちの罰を受けていないってことは『悪い子じゃなかった』ってことだよね 》
《 子供のイタズラなら罰じゃないもんね 》
《 イタズラもやりすぎは罰の対象だったけどね 》
《 今後、悪いことをしたら髪が抜けるけどね 》

その子供たちは『男女関わらず悪いことをしたら髪が抜ける』と信じているようだ。そのこともあって、真っ直ぐな心で育っていけるだろう。
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