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第七章
第223話
しおりを挟むギルドは発足する際に国へ申請する。その際に発足理由も必要となる。
冒険者ギルドなら、冒険者の把握と魔物の動向や異常行動の早期発見。
商人ギルドなら、価格の不正や商人の保護に商品の流通。
職人ギルドなら、王族や貴族たちによる職人の囲い込みや独占からの保護。
そして聖魔士ギルドは、聖魔士の管理と聖魔士による犯罪の防止。そして罪人に堕ちた聖魔士の処罰。
ギルドの罰は国によって違う。冒険者ギルドの罰は『魔力封じの腕輪』や『弱体化の首輪』など様々だ。職人ギルドの罰は、利き腕の切断が多い。商人ギルドの罰は町や村で商売ができなくなる。主に冒険者を相手に街道や野営地で露店を開くしかない。そして彼らのほとんどは『神の罰』を受ける。そして、彼らは『犯罪者』として捕らえられて法的な処罰を受ける。
しかし聖魔士ギルドの罰は一律だ。彼らの罰は『思考回路の破壊』一択だ。それは、イタズラ好きな聖魔が面白半分で協力してしまうからだ。それも、魔物たちをけしかけて隊商を襲わせていた。魔物は人肉を喰らい、聖魔士は金品を手にできる。しかし、聖魔士は他の聖魔士たちに捕らえられた。そのまま水牢で一生を終えるか、薬物の人体実験を受けて痛みや苦しみを受け続ける未来しか残されていなかった。今では逃げ出すためか報復のためかはわからないが、魔物たちに『この国を潰してくれ』と命じてしまった聖魔士がいた。……結果、魔物の集団が国を荒らしまわった。今でも当時の混沌が大地を腐らせ、人々の生活を逼迫させている。
…………その国の名は『コルスターナ国』という。
「で、その聖魔士の国が、今回大騒動を引き起こしてくれちゃったんだが……?」
「はい。それでその後に起きた聖魔士騒動も、すべてコルスターナが責任を取るそうです」
「……例の孤児三人は?」
「そいつは断られた」
「なんでまた……」
「親たちは『国外追放組』らしい。『すでに我が国と関わりはない』と突っぱねられたよ」
「十分に関係あるだろ? なんの犯罪かわからんが、犯罪者を他国に放出したんだ。自国で片付けておけば良かった問題を無関係の国に押し付けて『知らぬ存ぜぬ』で逃げようっていうのは無責任すぎる」
「……と迷惑を一番被った張本人が抗議してるが。都長はどうする?」
「エミリアさんはどうしたいですか?」
「アレは『コルスターナの元王子』だっけ。……ねえ、キマイラがダンジョン都市の守護者に就任したお祝いとしてあげていい?」
「そう聞いてみましょう」
都長が認めた手紙を転送石でコルスターナ国に直接送ったところ、コルスターナから外交そっちのけで謝罪文が届いたらしい。
「最近コルスターナに行ったひと~」
《 はーい 》
妖精たちが笑顔で手をあげる。直後にピピンの触手が床を叩いた。
「もう! みんなして何やってるのよ」
《 大丈夫だよ。ちょっと脅してきただけだって 》
「なに言ってんの。コルスターナは『聖魔士の国』なのよ。聖魔士くずれにでも捕まったらどうするの」
《 そんなことにはならな…… 》
バッチーン‼︎
《 キャー!》
《 ごめんなさーい‼︎ 》
《 二度と自分たちだけでコルスターナに行かない! 行かないから! 》
「しーらない」
《 エミリアァァァ‼︎ 》
妖精たちは忘れている。私が持っていた鳥籠が今はピピンが涙石で管理していることを。
リリンの触手が妖精たちを一纏めで絡めとると、ピピンが涙石から持ってきた鳥籠の中に投げ込んだ。
《 イヤー! 》
《 ごめんなさーい 》
《 だしてー! 》
妖精たちが泣きながら騒ぐが、鳥籠の中は魔法が効かない。そして白虎が鳥籠を咥えると涙石の中へ運んでいった。
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