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第七章
第220話
しおりを挟む王都から使者が来たという情報が届いたのは、無責任身勝手運命共同体の四十三人の表皮を好きなだけ斬り刻んでから塩水プールに投げ込んでフタをした翌日。すでに私たちは118番ダンジョンで妖精たちのキノコ狩り大会をして遊んでいたため、情報部のニュースを受け取っただけでスルーした。
彼らが来たのは、騒動を起こし人心を操った魅了のスキルを持つ女冒険者を『危険人物』として王都にある魔導研究所で預かるためだ。魅了などの人心を操るスキルを『確実に影響を受けない』魔導具を完成させるには、その魔法を詳しく知らなくてはならない。という理由で……『人体実験』まがいのことが行われるらしい。
人体実験といっても、スキル持ちの対象者に魔導具を装着させて、周囲に影響がでるか、本人にも問題が出ないか。そんな研究がされているそうだ。もちろん、安全な魔導具が完成すれば本人に装着させて、従来の肉体労働に加えさせる。彼女は『人心を惑わせた』という罪で、水路に掛ける橋のレンガを作る罰だ。土魔法の能力で作成個数のノルマが科せられる。ノルマに達成しなければ翌日に加算される。それが膨れ上がって、何年も贖罪の日々を送ることになる。
自身の色気や手管で相手を籠絡させるのはいい。ただ、スキルや魔導具で『相手を思いどおりにする』ことが許されていないだけだ。
「スキルも自分の個性だ」と主張をする人はいる。その通りだと私は思う。ただ、それを悪用することが問題であり罪なのだ。
『使者は都長の依頼を受け、国交問題の解決に乗り出すと約束した』
『聖魔士による犯罪の調査が開始』
『パルクス国国王直筆による公式な謝罪が都長宛てに届いた』
すべての情報は情報部がニュースとして公開してくれるため、私は一切かかわらずに知ることができる。
問題が起きる度に私たちがダンジョンに入るのは、小さなことで私が呼ばれることもなく、みんなには私たちが何かしでかさないかハラハラさせなくて済むのだ。
正直な話、王都は妖精たちの実験実践室になってるため、使者が何か言ってくると思ったが……
『使者たちは妖精の罰を「仕方がない」と思って受け入れているらしい』
という情報部のニュースもあった。そこには『王都では王族の言動に以前から反発があり、連日連夜、悪夢を見せられていることを知った人々は溜飲をさげている』とあった。
《 次になんかしてきたら、今度は起きてても怖いものが見えるようにしよう 》
《 エミリアが教えてくれたように、目の中の水分に幻をみせようよ 》
《 その前に、魔法が使えないようにしよう 》
《 幻に向けてぶつけた魔法が関係ない人に向かったら危ないもんね 》
妖精たちはすでに《 絶対何か問題を起こす 》と信じているため、楽しそうに作戦を立てている。
このまま問題なく終わるか心配だったけど、塩水プールに入っている四十三人は必要なら後日檻を持って迎えに来るそうだ。
それを聞いた人たちには、まず最初にどのグループの迎えが来るか、というカケが情報部主催で始まった。情報部のカケは自分で予想をするというもの。カケというもののお金はかけない。特典は、冒険者なら『ダンジョンの使用料が一年間無料になる』というものだ。商人や職人は『ダンジョンのドロップアイテムを一年間半額で仕入れができる』となる。冒険者で商人で職人の私はどちらか一つを選択する。ちなみに私は『犯罪ギルド所属だった四人』に冒険者特典で応募した。
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