私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第七章

第219話

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聖魔師テイマー様をはじめ、このダンジョン都市シティの皆さまには大変ご迷惑をおかけ致しまして……。お詫びのしようもございません」
「許されないとわかっているならパフォーマンスするなよ。うっとーし……ムグ」
「しー! エミリア。見つかるとあとが面倒だぞ」

屋台村の広場で行われているパフォーマンスを遠くから見かけて、連中に聞こえないだろうと思って呟いたらシーズルに後ろから口を塞がれた。

「……帰る」
「ああ、そうしろ。ミュレイ、家まで送ってやれ」
「はい。ではこちらへ。家の周辺の安全は私服にお任せください」
「うん。シーズル」
「どうした」
「あの連中、なんか言ってきたら「罪逃れパフォーマンスしてるヒマがあったら、サッサと罪を償え」と言ってやって」
「わかった」
「あ、そうそう。あの頭、ね~」
「……それがパフォーマンスあれの原因か」

シーズルは力が抜けたように肩を落とした。

「話し合いが、始まらずに終了した罰だからねえ~」

あの話し合いは結局開始できず。というのも、『もみ消しがバレちゃっ隊』の発言がさらなる混乱を引き起こしたのだ。

「我々が戻るときに聖魔師テイマーを連れて帰る約束を!」
「ふざけんな、ヴォケ‼︎ 誰がそんな約束した!」
「あ、いえ。ですので、そのお願いを……」
「ひと言も言ってないだろうが! 嘘吐き‼︎」
「ですが、我々は聖魔士ギルドです。ですから聖魔師テイマーのあなたには入ってもらう必要が……」
「腐れ外道が‼︎ そこのお前らは犯罪ギルドの残党だろうが‼︎ バレてないと思っているのか‼︎」

私をことを前提で話をされてブチギレた私が彼らの一部の正体をバラすと、ギルドマスターたちは知らなかったらしく目をぱちくりさせ、当の本人たちは青ざめていた。連中は『組織に所属していたが犯罪に加担していなかった』だけだ。もしくは、ギルドに潜り込んだところで組織が壊滅したのだろう。

「待ってください! 聖魔師テイマー様には我々の国に来ていただくよう話をしています!」
「黙れ! 聖魔師テイマーの身柄は聖魔士ギルドに権限がある!」
「黙らんか! クズ共‼︎」
拘束バインド
「「「ギャァァァァァァ‼︎」」」

私が怒鳴ると同時に放った魔法で、三組を鎖で全身を雁字搦めにして『静電気スタティック』の魔法を一発落として感電させた。ここは訓練場で地面は剥き出しの土。その上に倒れている彼らは、自身の涙と涎で顔中が濡れた土で汚れたツラに驚きと恐怖の表情を浮かべていた。

「な、にを……」
沈黙サイレント

まだ声を出す気力が残っているのがいたため黙ってもらった。

「あー。うるさかったー」
「話し合いも交渉も決裂です。王都には今回の騒動をすべて報告して『聖魔士ギルドの解散』を申請しますし、『回収隊』も国交問題に発展してもらいます」

私が「あ~、やれやれ……」と息を吐くと、新都長が打ち切りを宣言した。そして解散申請もするようだ。もう一度同じ場が用意されたとしても、連中と落ち着いて話し合えるとは思えない。だいたい、新都長の彼女も目をつり上げていかりを露わにしている。

「本人の拒否権を無視した言動。これはプリクエン大陸法とタグリシア国法、そしてこのダンジョン都市シティの『冒険者保護法』にも違反します」
「コイツら、なんで私個人の意思を無視して勝手なことをかしやがるんだ?」
「だからアホなんでしょう?」
「ルレイン。コレら、好きにしていいんだよね」
「それはいいのですが、先に取り調べや各種手続き等をさせてください。その後でしたら、生かしてくれれば良いです」

新都長のルレインが許可を出してくれる横では男性陣が警備の配置の相談をしている。私がガラスの水槽を出すことを前提として、どこに水槽を置いて隊員をどう配置するか決めている。その内容に、訓練場の床に転がっている連中は『手を出してはいけない相手に手を出し、敵に回してはいけない連中を敵に回した』ことを、動きの遅い脳味噌をフル回転させて理解したようだった。
……時すでに遅し。人はそれを『後悔先に立たず』という。
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